自伝旭鷲山、気が付けばレジェンド旭天鵬-モンゴル出身力士のパイオニア-

モンゴル出身力士のパイオニア

朝青龍(当時大関)が、モンゴル出身力士として初めて優勝した2002年九州場所以降、幕内最高優勝のほとんどを、モンゴル出身力士が飾っております(2006年春場所~2015年九州場所は日本出身力士の優勝はなし )。

番付上で見ても歴代4人の横綱と1大関をはじめとして、三役はもちろん、数多くの幕内力士を輩出し、今や大相撲界の第一勢力となったモンゴル出身の力士達。

今回ご紹介させて頂く相撲関連の書籍本ですが、そんなモンゴル出身力士のパイオニアとして活躍した二人の力士を合わてのご紹介となります。

「モンゴル出身の力士」はおろか、「モンゴル」という国さえも身近ではなく珍しかった平成初期、苦労した二人の若者が残した相撲人生を通して、現在多数在籍している「モンゴル出身力士」隆盛までの歴史を学んで頂けると幸いです。

「自伝 旭鷲山」旭鷲山

まず一冊目にご紹介させて頂くのは、「自伝 旭鷲山」です。

旭鷲山(元小結)といえば、モンゴル力士のパイオニア的存在として、日本だけではなく母国モンゴルにおいても有名な力士です。

平成4年春場所に初土俵を踏んだ、モンゴル出身力士6人の若者の中の中でも旭鷲山は最も出世が早く、相撲界においての「モンゴル出身初の○○」というのは、三役まではこの旭鷲山が達成しているはずです。

旭鷲山が幕内力士として活躍する姿は、母国モンゴルでもテレビ中継されていたため、現在相撲界で活躍している多くのモンゴル出身力士達が幼い頃旭鷲山に憧れ、その影響を受けて日本の相撲界にやって来たわけです。

先程記述したように、今でこそ日本出身力士が10年以上も賜杯を抱けぬほど土俵の主役として君臨している「モンゴル出身力士」ですが、旭鷲山が活躍していた当時の相撲界において「外国人力士」といえば、規格外の体型とパワーを持つハワイ勢が主流となっており、多彩な技を繰り出す旭鷲山は「技のデパートモンゴル支店」と言われ、土俵の名脇役的な存在でした。※ 本店は「技のデパート」と呼ばれた舞の海。

こちらの「自伝 旭鷲山」は、旭鷲山が三役昇進したばかりの頃に出した一冊でしたが、今になって振り返ると旭鷲山はこの頃が全盛期であり、結果敵には少し後を追いかけてきた旭天鵬こそがモンゴル1期生の中では出世頭になりました。

最高位や数々の記録は、後輩力士達が塗り替えていきましたが、「モンゴル出身力士初の〇〇」という旭鷲山が獲得した記録のいくつかは、これからも永久的に相撲界に残っていきます。

モンゴル出身力士初の関取、モンゴル出身力士初の幕内、モンゴル出身力士初の三役、モンゴル出身力士初の三賞。。。

そしてなにより、沢山の後輩達の先駆けとなって道を切り開いた功績・・・

土俵上での話も沢山書いてあるのですが、「自動販売機を始めて使用した」「喫茶店で水にお金を払った」「貨幣価値が全く違う」など、文化の違いについての記述が印象に残る一冊でした。

ちなみに私はこの本でモンゴルの寒さを始めて知りました(笑)

自伝 旭鷲山

 

自伝 旭鷲山―大草原から土俵へ
目次
第1章:いたずらっ子誕生
第2章:転校、また転校
第3章:相撲、狩り、田舎大好き
第4章:大相撲への挑戦
第5章:石の上にも三年
第6章:故郷のためにも

角界のレジェンド旭天鵬

次にご紹介するのはこちらの一冊です。

「気がつけばレジェンド」 旭天鵬

比較的日の浅い相撲ファンの方にとっては、モンゴル出身力士のパイオニアと言えば旭天鵬をイメージされる方も多いかもしれません。

旭天鵬もまた、先程ご紹介した平成4年春場所に来日した6人のモンゴル出身力士の一人です。

当初旭天鵬は、旭鷲山の陰に隠れた「モンゴル出身力士の二番手」的なポジションの存在でしたが、新入幕から4場所で三役昇進した後に平幕定着することになる旭鷲山を尻目にメキメキと力を付けていき、37歳8か月で最年長幕内初優勝を飾るなど最終的には40歳を超えるまで現役を続けました。

晩年は「角界のレジェンド」とも呼ばれるようになり、親方として角界に残った引退後も変わらずに、モンゴル出身力士のパイオニアとして横綱達をはじめとした同郷の力士達の兄貴分として、一目おかれる存在となっています(優勝時のパレードでは横綱白鵬自ら旗手を努めました)。

「平成4年春場所~平成27年名古屋場所」という、昭和の匂いが色濃く残る平成初期から現在の相撲界までを現役として見てきた旭天鵬なだけに、こちらの一冊の内容は非常に濃いです。

現役生活が長すぎて(笑)その全貌を理解出来ていない方も、こちらを読んで頂けると、旭天鵬の偉大さが分かるはずです。

ちなみに意外に知られていないのですが、平成の大横綱と言われる貴乃花に土を付けたことがある唯一のモンゴル出身力士は旭天鵬です(旭鷲山や朝青龍は全敗)。

 

旭天鵬自伝 気がつけばレジェンド
目次
第1章:日本へ
第2章:最初の挫折
第3章:パイオニアとして
第4章:試練からの復活
第5章:栄光、そしてレジェンドへ
第6章:感謝

相撲ファン達の中でその存在に賛否はあるものの、モンゴル出身力士同士の互助会を作るなど、モンゴル出身力士が相撲界において居心地が良くなるような環境を整え、後の躍進への道を作った旭鷲山と旭天鵬の二人。

「モンゴル人力士」が相撲界でまだ小さな存在だった頃の話ですので、この2冊はぜひ合わせて読んで欲しいなと思います。

日本で経験する夏の暑さに耐えかねて大使館に逃げ込んだ彼らが、もしあのまま帰国して現役生活を終えていたら、相撲の歴史は大きく変わっていたはずです。

20数年後の相撲界を知っている今だからこそ、楽しめる二冊ではないでしょうか?

 

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