33勝しないと大関にはなれないのか?-大関昇進の条件-

大の里秋場所は大関取りか?

夏場所に史上最短7場所での幕内最高優勝を飾り、名古屋場所では早くも大関取りの声が掛かった大の里でしたが、残念ながら二桁に届かない9勝6敗で終わってしまい、何となく大関昇進の声が小さくなったような気がします。

しかし、冷静にここまでの星勘定をしてみると、夏場所が12勝で名古屋場所が9勝。2場所の勝星を合計すると21勝になります。

一般的に大関昇進の目安とされている「3場所33勝」の視点から考えれば、次の秋場所で12勝すれば33勝に届きます。

それだけでなく、13勝を挙げ優勝でもした日には「34勝+幕内優勝」となるので間違いなく大関昇進が決定するはずです。

ということは、秋場所は大の里にとって「大関取りの場所」は継続ということになるため、相撲ファンとしては秋場所の大きな目玉の一つとなるはずです。

「大関昇進とその目安」

こちらについては、度々触れては来ているものの、「大関昇進やその条件」に絞った内容の記事はこれまで書いていないような気がするので(書いているか?)、今回は「大関昇進」について過去の例を見つつ、大の里の可能性も含め語ってみたいと思います!

大関昇進の条件

大関昇進の条件には、横綱昇進のような明確な決まりはありませんが、一般的には「直前3場所(関脇・小結)での合計勝ち星33勝」が目安だと言われています。

 

 

しかし、これはあくまで目安であり、「三役で二桁コンスタントに勝っており、それが3場所くらい続いている」そんな状況であれば、少なくとも「大関候補」と呼ばれるようにはなってくるはずです。

平成以降の大関昇進ケースを見てみましょう。

霧島:10勝(小結)→11勝(小結)→13勝(関脇)※優勝同点 合計34勝
曙:13勝(小結)→8勝(関脇)→13勝(関脇) 合計34勝
貴花田:14勝(小結)→10勝(関脇)→11勝(関脇) 合計35勝
若花田:14勝(小結)→10勝(関脇)→13勝(関脇)※優勝同点 合計37勝
貴ノ浪:10勝(関脇)→12勝(関脇)→13勝(関脇) 合計35勝
武蔵丸:8勝(関脇)→13勝(関脇)→12勝(関脇) 合計33勝

千代大海:9勝(関脇)→10勝(関脇)→13勝(関脇)。合計32勝
出島:9勝(小結)→11勝(関脇)→13勝(関脇) 合計33勝
武双山:10勝(小結)→13勝(関脇)→12勝(関脇) 合計35勝
雅山:12勝(小結)→11勝(関脇)→11勝(関脇) 合計34勝
魁皇:8勝(小結)→14勝(小結)→11勝(関脇) 合計33勝

栃東:10勝(関脇)→12勝(関脇)→12勝(関脇) 合計34勝
朝青龍:11勝(関脇)→11勝(関脇)→12勝(関脇) 合計34勝
琴欧洲:12勝(小結)→13勝(関脇)→11勝(関脇) 合計36勝
白鵬:9勝(小結)→13勝(関脇)→13勝(関脇)※優勝同点 合計35勝
琴光喜:10勝(関脇)→12勝 (関脇)→13勝(関脇) 合計35勝
日馬富士:10勝(関脇)→12勝(関脇)→13勝(関脇)※優勝同点 合計35勝
把瑠都:9勝(関脇)→12勝(関脇)→14勝(関脇) 合計35勝
琴奨菊:10勝(関脇)→11勝(関脇)→12勝(関脇) 合計33勝
稀勢の里:10勝(関脇)→12勝(関脇)→10勝(関脇) 合計32勝
鶴竜:10勝(関脇)→10勝(関脇)→13勝(関脇) 合計33勝
豪栄道:12勝(関脇)→8勝(関脇)→12勝(関脇) 合計32勝
高安:11勝(小結)→12勝(関脇)→11勝(関脇) 合計34勝


栃ノ心:14勝(前頭3枚目)→10勝(関脇)→13勝(関脇) 合計37勝
貴景勝:13勝(小結)→11勝(関脇)→10勝(関脇) 合計34勝
朝乃山:11勝(小結)→10勝(関脇)→11勝(関脇) 合計32勝
正代:8勝(関脇)→11勝(関脇)→13勝(関脇) 合計32勝
御嶽海:9勝(関脇)→11勝(関脇)→13勝(関脇) 合計33勝
霧馬山:11勝(小結)→12勝(関脇)→11勝(関脇) 合計34勝
豊昇龍:10勝(関脇)→11勝(関脇)→12勝(関脇) 合計33勝
琴櫻:9勝(関脇)→11勝(関脇)→13勝(関脇)※優勝同点 合計33勝
※優勝同点は何人か抜けているかもしれません。

ここまでご覧頂くと、33勝に達していないケースや、直前3場所が三役でないケースもありますので、「直前3場所(関脇・小結)での合計勝ち星33勝」と言うのは改めて目安であり、感覚的に言えば、、

「三役辺りで二桁コンスタントに勝っており、それが3場所続いている。」

こんなニュアンスが大関昇進の条件だと思っておけばOKです。

ちなみに、大関昇進直前3場所の合計勝ち星を見ると、後の3代目若乃花(当時若花田)と栃ノ心の37勝がトップで、次いで琴欧洲の36勝が続きます。

相撲協会の気持ちと世間の空気次第

ここまで33勝の勝星について紹介してきましたが、大関昇進には、もう一つ同じくらい重要なことがあります(もしかするとそれ以上か?)。

それは、相撲協会の中で「大関を作りたいという想い」と「世間の空気」です。

分かり易い例でご説明すると、125年ぶりに1横綱(照ノ富士)1大関(貴景勝)という番付だった令和5年の初場所。

相撲協会としては、興行である以上やはり看板として横綱大関の人数は、休場も見越してある程度確保しておきたい気持ちがあるため、こういった場合は早期での大関誕生を本心では望んでいます。

これまで「少し甘い?」「もう一場所見れば?」と感じた大関昇進があったかもしれませんが、そこには多少相撲協会の思惑も入っていたはずです。

そして更に相撲協会の想い以上に昇進を後押しするのは「世間の声や雰囲気」です。

今も昔も番付に長く閉塞感がある場合、相撲ファンとしてはそこに風穴を開けてくれる力士の誕生を望みます。

若貴の壁に阻まれ、なかなか新大関の誕生がなかった、若貴ブームマンネリ時期に突如優勝した千代大海や、モンゴル旋風が吹き荒れ、日本出身のニューヒーロー誕生の象徴とされていた稀勢の里などは、33勝に満たなかったとしても、相撲ファンの中では満場一致の昇進なのです。

ちなみに、横綱昇進が横綱審議委員会に打診するのに対して(相撲協会だけでは決めることが出来ない)、大関昇進は相撲協会の審判部から理事会に上げるので、相撲協会がその昇進を決定しています。※かなりざっくりした説明ですが。

北の富士さんが28勝で大関昇進したことが若干ネタになっていますが、「3場所連続で三役(関脇・小結)の地位にあって、その通算の勝ち星が30勝以上」となっていた時代もあったそうなので、こちらも当時としては「少し甘めの査定」だったのでしょう。

大関に一番近かった力士は誰か?

「相撲協会の想い(思惑?)」や、「世間の声や空気」などと書いてきたものの、やはり三役で3場所連続合計33勝というのは難しいもので、これまで多くの名力士達が「あと僅か」で大関昇進を逃し、「名関脇」で土俵人生を終えてきました。

大関に一番近かった力士は誰か?を少し調べてみましょう。

まず注目したいのが「三役(関脇・小結)での在位場所記録」
トップ10の力士から「大関昇進を果たした力士」は外して見てみましょう。

琴錦:34場所(関脇21場所・小結13場所)
長谷川:30場所(関脇21場所・小結9場所)
高見山:27場所(関脇8場所・小結19場所)
安芸乃島:27場所(関脇12場所・小結15場所)
貴闘力:26場所(関脇15場所・小結11場所)
若の里:26場所(関脇17場所・小結9場所)

名前を連ねる力士達は、少なくとも三役在位場所数通算で4年以上になるので、さすがに三役のイメージが強い力士が並んでいます。

後の昇進者を入れてもランキングトップだった琴錦は、13勝(優勝)→12勝(準優勝)→7勝、11勝→13勝→7勝といった時期もあったので、まさに最強関脇でありあと一歩でした。

しかし、大関昇進の条件は「直前3場所 」ということになるので、「通算記録」というよりも、むしろ「連続記録」の方が重要になってきます。

ということなので「連続記録」の方を調べてみると、10名中4名が大関昇進を果たした「通算記録」に比べその倍である、トップ10の力士中なんと8名が後に大関以上に昇進を果たしています(御嶽海、魁皇、琴光喜、豪栄道、北葉山、武双山、大麒麟、武蔵丸、安馬(日馬富士)。

昇進出来なかった力士のうちまず一人が逆鉾ですが、こちらは11場所連続で三役を勤めるものの二桁はゼロ。約半分の場所を8勝7敗と綺麗にまとめた成績で、お世辞にも「大関候補」というよりも「万年関脇」というイメージは拭えません。※全体でも8位

そんな中、全体でトップを飾ったのが通算記録にも名前のあった若の里。なんと19場所約3年間連続で三役に在位していました。

そのうち6場所で二桁勝利。10勝→11勝という場所もあり、正に大関候補にふさわしい(ご本人は嫌でしょうが)。琴錦同様こちらもあと一歩でした。

3場所というのは約半年。この期間コンディションと緊張感を継続することは強い関脇たちでも難しく、これまでの昇進事例を見ても「優勝を絡めてチャンスをものにする」のが一番の近道のようにも思えます。

秋場所「大関取り」を目指すことになる大の里ですが、まだまだ勢いもあり、2場所前の優勝を絡める事も出来る状況です。

宿命を持った力士だと前回紹介している力士だけあり、今回失敗してもいずれは昇進出来ると思いますが、絶対はないだけに今がチャンスです。

「33勝」という数字云々を忘れるくらいのインパクトある昇進を望んでいます。

 

 

ちなみに、昇進前の記録に比べると昇進後の記録は下回るケースが殆んどです。半年間という緊張感は、やはり疲れがたまるのでしょうか、、、

 

 

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