横綱昇進するにはどうすれば良いのか?横綱昇進の条件とは?

貴景勝が横綱昇進に挑戦

週明けに番付発表を控え、いよいよ春場所の足音が聞こえてくる季節になってきました。大阪場所が本格的な開催となるのはコロナ以降初めてになるので、きっと現地の盛り上がりは例年以上のことだと思います。

そんな春場所最大の注目はもちろん「貴景勝の綱取り」です。

先の初場所では13場所ぶりの優勝を飾った貴景勝にとって、春場所は久々の綱取り場所となる予定で、初場所後は貴景勝がメディアに登場するたび、綱取りに関する質問も増えてきています。

「貴景勝にとっての綱取り場所」を振り替えると、これまで「成績次第では。。。」という「一応の綱取り場所」は何度かありましたが、「大関で優勝した翌場所」という「正真正銘の綱取り場所」というのは今回が2度目になります。

前回の綱取り場所は、大関として2度目の優勝を飾った翌場所の、令和3年初場所。その時は初日から4連敗と失敗に終わってしまいましたが、それ以来の綱取り場所です。

今回の綱取りが成功すれば、一昨年名古屋場所の照ノ富士以来の綱取り成功、同じく秋場所以来の新横綱誕生となります。

そして、夏場所を貴景勝が横綱として迎えることが出来て、二横綱が東西に並ぶことになれば、それは鶴竜が引退した令和3年春場所以来のことになります。

 

 

様々な側面で注目の「綱取り」ですが、そもそも横綱昇進の条件とはどのようなものなのでしょうか?

明確な決まりがあるのか?それとも雰囲気なのか?

知っている人も知らない人も、改めて横綱昇進のルールを見てみましょう。

横綱昇進の条件

このブログでもこれまで何度かご紹介しているように、横綱昇進の条件は唯一つ。

「2場所連続優勝かそれに準ずる成績」これだけです。

にも関わらず、度々横綱昇進が賛否両論になるのは、後半に記載されている「準ずる成績」という言葉のニュアンスが曖昧だからです。

この辺りの説明は後程するとして、まずは平成以降の横綱昇進の事例を見てみましょう。以下の通りです。

旭富士:8勝7敗、14勝1敗(優勝)、14勝1敗 (優勝)
曙:9勝6敗、14勝1敗(優勝)、13勝2敗(優勝)
貴乃花:11勝4敗、全勝優勝、全勝優勝
若乃花(三代目):10勝5敗、14勝1敗(優勝) 、12勝3敗(優勝)
武蔵丸:8勝7敗、13勝2敗(優勝)、13勝2敗(優勝)
朝青龍:10勝5敗、14勝1敗(優勝)、 14勝1敗(優勝)
白鵬:10勝5敗、13勝2敗(優勝)、全勝優勝
日馬富士:8勝7敗、全勝優勝、全勝優勝
鶴竜:9勝6敗、14勝1敗(同点)、14勝1敗(優勝)
稀勢の里:10勝5敗、12勝3敗、14勝1敗(優勝)
照ノ富士:12勝3敗(優勝)、12勝3敗(優勝)、14勝1敗
※同点:優勝決定戦で敗退

平成初の横綱となった旭富士からその弟子日馬富士まで、全ての横綱が2場所連続で優勝を飾っており、平成に入ってしばらくの間は、「準ずる成績」が用いられたことはありませんでした。

この長きに渡り守られてきた「2場所連続優勝」の流れを断ち切り横綱に昇進したのが、平成26年夏場所に横綱昇進をした鶴竜。

その後は、稀勢の里・照ノ富士と、ここ最近は3人続けて「連続優勝での昇進」ではありません。

鶴竜は前々場所の優勝同点を「準ずる成績」と認められ、稀勢の里は「準ずる成績」というよりも年間最多勝の獲得など「安定性」を認められ、照ノ富士は直前場所を千秋楽相星決戦で敗れたものの、準優勝を「準ずる成績」と認められての昇進でした。

こうして見ると、ここ最近の横綱昇進の基準は甘くなったような印象を受けるかもしれませんが、実は平成に入ってからの時期がむしろ「厳しかった」という見方も出来なくはないです。

厳しくなった平成の横綱昇進

「2場所連続優勝かそれに準ずる成績」

この昇進条件はもちろん昔から存在していたのですが、昭和の頃はもっと基準は甘く、連続優勝して昇進する方がむしろ少ない時代でした。

今度は、先程記載した横綱達よりも少し前の昇進事例を見てみたいと思います。

玉の海:13勝2敗(優勝) 、10勝5敗、13勝2敗(同点)
北の富士:12勝3敗、13勝2敗 (優勝) 、13勝2敗(優勝)
琴櫻:9勝6敗、14勝1敗(優勝) 、14勝1敗(優勝)
輪島:11勝4敗、13勝2敗、全勝優勝
北の湖:10勝5敗、13勝2敗(優勝) 、13勝2敗(同点)
若乃花(二代目):13勝2敗、13勝2敗(同点)、14勝1敗(同点)
三重ノ海:10勝5敗、13勝2敗、14勝1敗(同点)
千代の富士:11勝4敗、13勝2敗、14勝1敗(優勝)
隆の里:12勝3敗、13勝2敗、14勝1敗(優勝)
双羽黒:10勝5敗、12勝3敗、14勝1敗(同点)
北勝海:11勝4敗、12勝3敗(優勝) 、13勝2敗
大乃国:全勝優勝、12勝3敗、13勝2敗

平成以降に誕生した横綱が、11名中8名2場所連続優勝を飾っての横綱昇進だったのに対して、1970年以降の昭和に誕生した12名の横綱中、連続優勝での昇進は北の富士と琴櫻の二名のみ。

二代目若乃花、三重ノ海、双羽黒の三横綱は、直近3場所で優勝がないにも関わらず横綱昇進を果たすなど、現在では考えられない成績です。

近年綱取りの話題になると、「高いレベルでの優勝」という言葉をよく耳にしますが、過去の綱取りを見てみると、決して「高いレベルの優勝」はおろか、優勝さえもないケースでの昇進が存在したのです。

 

 

双羽黒事件の影響

意外に「甘い」昇進基準だったのが、平成に入ってここまで厳格になった理由は、横綱双羽黒の存在が影響しているのではないか?と言われています。

その恵まれた体格や身体能力で、早くから期待されていた双羽黒(四股名が既に期待に溢れている)ですが、千代の富士包囲網によりあと一歩優勝に手が届いていませんでした。

しかし、まだ若く将来性も高い力士だったため、中には反対意見もありましたが、千代の富士と優勝を争った14勝同点での成績を「準ずる成績」と評価され、横綱に推挙されました。

先程名前を挙げた、二代目若乃花や三重ノ海は直近場所での優勝こそありませんでしたが、既に優勝経験がある状態での横綱昇進(昇進後の優勝もあり)に対して、双羽黒は優勝未経験での横綱昇進。かなりの期待値だったことがわかります。

しかしその結果は。。。

この双羽黒の横綱昇進が時期尚早だったという過去の反省から、以降の横綱昇進が厳しくなったという見解があります。※北勝海や大乃国は、双羽黒廃業時既に横綱

 

 

結局は世間の雰囲気

ここまで読んで頂きお分かりのように、横綱昇進の基準は平成以降厳格だった時期を超え、ここ最近は寛容になってきているのが分かります。

「準ずる成績」という曖昧な言葉がその鍵を握るのですが、横綱昇進にとって最も重要なのは、「横綱が欲しい」という相撲協会の思惑と世間の期待値です。

例えば優勝はしていない「13勝」という勝ち星だった場合、その成績を「準ずる成績」と解釈するのか?しないのか?はあくまで相撲協会の判断であり、相撲協会が推挙するかを後押しするのは世間の雰囲気なのです。

稀勢の里が横綱昇進した際、直前場所は優勝を飾りましたが、前々場所は12勝でトップとは2差。しかし3横綱を撃破しての12勝と、何より「日本人横綱誕生」への世間の期待が大きく後押ししました。

そう考えた場合、一横綱しかいないこのタイミングで綱取り場所を迎える貴景勝にとって、春場所の土俵は横綱昇進に向けて追い風となるはずですが、反面、初場所の優勝が12勝だったことを考えると、「準ずる成績」というケースになるとかなり意見が割れる可能性が高くなります。

いつの時代も相撲ファンの意見を分二つにする「準ずる成績」。

その曖昧さを解決するのは至って簡単で、優勝すればいいだけの話です。

何度も言うように、横綱昇進の条件は「2場所連続優勝かそれに準ずる成績」。

ただこれだけです。一部12勝での優勝はレベルが低いと言われていますが、優勝は何勝だろうが優勝です。極端な話11勝でも優勝です。

春場所初日まであと2週間。

 

 

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