春場所が荒れる理由
かつては「荒れる春場所」などと言われていた時代もありましたが、初優勝力士が多く誕生しているここ最近は、「荒れる」という言葉さえも死語になりつつあります。
そもそも、なぜ「荒れる春場所」などと言われていたのでしょうか?
意外に知られていないのですが、これは昭和28年の春場所に横綱千代の山が、横綱として相応しくない成績のため「横綱返上」を申し出たことが起源と言われています。
番付が下がらない絶対的な地位である「横綱」だからこそ、その地位を返上したいというのは異例の出来事であり、その時のことが「荒れる」のイメージを植え付けるのには十分だったのかもしれません。
冒頭から話が逸れましたが、先週番付発表も行われ、いよいよ春場所開催まであとわずかとなりました。果たして令和5年春場所は荒れるのでしょうか??
今場所も私的な展望を書き連ねていきたいと思います。
春場所はここに注目だ
貴景勝綱取りへ
春場所最大の注目は、何を置いても貴景勝の綱取り物語でしょう。
この件に関しては以前別の記事で散々書いたので、詳しくはそちらをご覧いただければと思いますが、横綱が一人という現状を考えた時、相撲協会としては横綱が欲しいタイミングになるので、綱取りとしては追い風の場所となります。
突き押し相撲の貴景勝の新たな引き出しとして、千秋楽に優勝も呼び寄せた「投げ技」が、綱取りの鍵を握るでしょうか?
序盤戦に注目です。
鍵を握る無敵の平幕正代?
大関角番から3場所連続で負け越し、春場所はついに平幕に陥落した元大関正代。平幕での土俵は約3年ぶりになります。
最近の正代に対するお客さんの反応はというと、「勝つと歓声・負けるとため息」もはや引退間近の力士状態ですが、今場所の正代は大関でもなく、大関取りや復帰場所でもない「注目されない地位での本場所」になります。
正代にとっては久々に、プレッシャーがない状態で本場所の土俵に上がることになるのです。
これは上位陣にとって、嫌なことこの上ないはずです。ノープレッシャー正代は強敵です。
ちなみに最後に平幕だった時の正代は、前頭4枚目で13勝2敗でした。
覚えているか?去年の初優勝を若隆景
昨年の春場所の優勝力士を覚えていますか?
そう、千秋楽優勝決定戦を制した「新関脇若隆景」。あれから全場所で勝ち越し、関脇の地位を守り続けています。
すっかり全国区になった一方で、この地位に定着してしまった感じもあり、最近ではお兄ちゃんの方に勢いを感じることもあります。
昨年覇者として、優勝争いに顔を出したいところでしょう。
新たな大関候補へ名乗り霧馬山
初場所の時点では大関候補一番手と聞かれ、多くの相撲ファンが「豊昇龍」と答えたはずですが、今場所真っ先に名前が挙がるのは「霧馬山」でしょう。
2場所連続小結で勝ち越すも、上が閊えてなかなか上がれなかった霧馬山が、11勝を上げて待望の新関脇として春場所の土俵に上がります。
早くから期待されていた逸材が、ようやく大関を狙うところにやって来ました。
新関脇は立派ではありますが、霧馬山の期待値からしたら、守ってる場合ではないでしょう。
春場所まぐれとは言わせない琴勝峰
残念ながら初優勝とはなりませんでしたが、貴景勝と千秋楽まで優勝争いを繰り広げた琴勝峰。
出世は順調だったものの、王鵬や豊昇龍に比べると、これまでやや印象が薄い感は否めませんでした。
進化を問われる春場所は、前頭5枚目で迎えます。
前回同位置では8勝しましたが今場所はどうでしょうか?同世代のライバルや、高校の先輩や後輩など、相手にとって不足なしの春場所になりそうです。
新入幕が熱いぜ金峰山と北青鵬
今場所は新入幕力士の躍進がいつも以上に楽しみな場所となっています。
まずは北青鵬。コロナ関連による休場が絡んだものの、その恵まれた体型と素質から考えるとむしろ遅いくらいの新入幕です。
初土俵から連勝街道を邁進していた頃、「もっと強い人とやるのが楽しみ」という力強い発言をしていたのを聞き、私の周りでは「悟空」とあだ名がついています。相撲にスピードを加え、スーパーサイヤ人として幕内に降り立つことが出来るでしょうか?
そしてもう一人、春場所カザフスタン出身初の幕内力士として土俵に上がる金峰山。こちらもスケールの大きさは北青鵬と並ぶか、もしくはそれ以上の逸材です。
初場所朝乃山を後退させた突き押し相撲は、幕内でも通用するはず。
四つでも相撲がとれる器用さを持っているので、金峰山と言わず富士山くらいに期待の出来る力士であることは間違いなさそうです。
これまでに複数の新入幕力士が、三賞を同時受賞したケースがあるのか分かりませんが(調べろよ)、春場所は実現するかもしれませんね。
ミニ貴景勝も新入幕へ
北青鵬や金峰山に比べると少しインパクトに欠けるかもしれませんが、この人も忘れてはいけません、同じく春場所新入幕の武将山です。
ここまで大勝ちもなく番付運も悪かったため、目立った活躍がない印象ですが、武双山子飼いの関取一号として、こちらも今後が期待される力士の一人です。
埼玉栄高校相撲部の主将を務めていたことがフォーカスされますが、「尾曽相撲道場」の出身でもあり、彼もまた幼い頃から「相撲道」を歩んできた力士の一人。
そのフォルムや取り口は貴景勝にそっくりで、一部ファン達の中では「ミニ貴景勝」などとも呼ばれているようです(自分だけか?)が、武将山の方が先輩。
早く上位に上がって貴景勝戦を見たいと願っているファンも多いはずです。
いつかはいつ訪れるか?高安
初場所、初優勝を期待されつつ休場になってしまった高安。
西前頭7枚目で迎える今場所、番付的には序盤から飛ばして優勝戦線を引っ張れる位置にいるので、今度こそは初賜杯を抱きたいところです。
たしかな実力を持っているのは相撲ファンの誰もが認めるところですが、「先行逃げ切り」・「後半追い上げ」どちらの展開になったとしても、やはり終盤戦への不安は残ります。
友人のスー女も言ってました。
「高安が初優勝をしないと、自分の推しと優勝争いをした時素直に応援出来ない。」
もはや最後は気持ちの問題!もう何度も書いていますが、初優勝を皆が祈っています。
少しずつでも前に平戸海
初場所から1枚番付を上げ、西前頭9枚目の自己最高位で春場所を迎える平戸海。関取になってから、二桁はおろか9敗での負け越しもなく、コツコツと番付を上げてきました。
幕内最年少の若さと豊富な稽古量を考えれば、それほど対戦相手が変わらない今場所も大崩れは考えにくく、きっと安定の成績を見せてくれるでしょう。
個人的にはこのまま明生のように、確実に力を付けて上位に上がって欲しいと思っています。
うちの後輩が後援会に入りました。勝ち越して横浜巡業に来てあげて下さい。
今場所も十両は注目
初場所で十両優勝を飾った朝乃山、1場所での幕内復帰は叶いませんでしたが、その代わりと言っては何ですが、春場所も引き続き十両の土俵が盛り上がりそうです。
今場所は史上初の「十両に幕内優勝経験者が4名」という豪華な顔ぶれとなっています。
十両に残留となってしまいましたが、栃ノ心VS朝乃山という大関経験者のプライドをかけた決戦や、怪我ではなく陥落している逸ノ城との、現在の実力を測るにはもってこいの対戦などもあり、春場所も朝乃山を中心にアツイ攻防が繰り広げられそうです。※もちろん徳勝龍戦も。
春場所の十両といえばもう一人、史上初のデビューからわずか「1場所」で十両昇進を果たした落合。
朝乃山が、十両後半戦を盛り上げる存在だとしたら、こちらは前半戦を盛り上げる存在になりそうです。
総髪はおろか、坊主頭での新十両というのは初めて見るので、初日の土俵入りが楽しみです。
「落合に土を付けるのは誰か?」序盤戦はここにも注目が集まりそうですが、周囲の雑音は気にせずに臨んでもらいたいものです。
怪物とは言ってもまだまだ19歳、本場所2場所目です。
幕内・十両と、新たな息吹が芽生えそうな予感がする春場所。
初日まであと1週間です。現地には行きませんが、アツイ15日間を期待しています。