横綱に一番近い漢の話-貴景勝光信-

パパ景勝千秋楽決戦を制し優勝

125年ぶりの「1横綱1大関」という番付だった初場所を、一人横綱の照ノ富士が休場したため、上位力士としてただ一人出場した大関貴景勝。

綱取りはおろか、様々な物を背負い土俵に立ち続けた15日間となりましたが、千秋楽、優勝争いで並んでいた埼玉栄高校の後輩琴勝峰との直接対決を制し、見事12勝3敗の成績で13場所ぶり3回目の優勝を飾りました。

結びの一番では、琴勝峰も挑戦者らしく真っ向勝負を挑みましたが完敗。
実力はもちろん、背負う物の大きさや悲壮感、覚悟、様々な物が貴景勝にはまだ及ばなかったのかもしれません。

連日「流血」が話題にもなっていましたが、いつもと変わらぬ気迫ある相撲を見せてくれた大関には、心から「おめでとう」と「お疲れ様」と声をかけてあげたいです。出場全力士中最高位の力士として堂々たる立派な土俵でした。

優勝後の記念撮影で、ファン達に今場所一番のサプライズをくれたパパ景勝ですが、しばしの休息の後、春場所は自身の夢を掛けた戦いが待っています。

「正真正銘」の綱取り場所へ

九州場所で12勝をあげ優勝同点の成績だった貴景勝は、初場所も綱取り場所ではありましたが、いわゆる「優勝に準ずる成績」を受けての綱取りだったため、場所前から「高いレベルでの優勝」や「内容が問われる」など、歯切れの悪い表現に場所を通して付きまとわれました。

しかし春場所は、「準ずる成績」などという中途半端な言葉は存在しない、 誰が何と言おうと「正真正銘の綱取り場所」になります。

貴景勝はご当所大阪で、見事大輪の花を咲かすことは出来るのでしょうか?

稀勢の里以来の日本出身横綱誕生への期待が高まっていますが、世間とは都合の良いもので、勝っている時は良いですが、負け始めると手のひらを返したように、再び貴景勝に対して、批判的な言葉が発せられるようになるはずです(今も一部ありますが)。

「押し相撲は安定感に欠ける」「小さな体で横綱は難しい」「押し以外の技がない」

だいたい貴景勝が連敗したり、序盤で負けが込んできた際に、書かれる内容や発せられるコメントです。

しかし貴景勝ファンからすれば、「そんなことは分かってる」はずで、一番理解しているのは何より貴景勝本人のはずです。

「あんまり貴景勝をなめんなよ。」

そう思っている人も多くいることでしょう。

弱点は本人が一番理解している

組み止める四つ相撲に比べ、押し相撲の場合は波乱の起こる可能性があります。

それゆえ安定性に欠け、「押し相撲は横綱になれない」と昔から言われ続けています。

しかし貴景勝は言ってました、「足の運びなどは、四つ相撲を参考にした押し相撲をイメージしている」と。

また、貴景勝は背も小さく手が短いため防御力が低いので、組み止められて中に入られる展開になると敗れる確率がグッと高くなります。

そのため、小柄な体型や、押し一辺倒の相撲内容に対するネガティブ発言をする人もいます。

たしかに懐が深い力士であれば、多少立ち合い失敗をしたとしても、抱え込むことで勝機を見出せる瞬間が出来るのですが、貴景勝の場合は立ち合いから一瞬も失敗が許されない、緊迫した土俵が15日間続くことになるのです。

そんな弱点に関して貴景勝は、「入られた際の稽古はしている」とコメントしていましたが、今場所「小手投げ」や「すくい投げ」で勝利した相撲を見て、相撲の領域が広がったように感じたのは私だけでしょうか?

千秋楽結び、体が勝手に動いたという投げ技でしたが、「これまでの道は無駄じゃなかった」ということを証明する渾身のすくい投げでした。

 

 

もらい事故状態の大関不調論

名古屋場所の逸ノ城から始まり、秋場所の玉鷲、九州場所の阿炎と、3場所連続して平幕が優勝をしていることもあり「大関陣のふがいなさ」がここ最近はよく言われています。

「昇進時の成績を見直すべき」はもちろん、直前3場所ではなく、「大関昇進の対象になる場所をもっと長期で見るべき」など、現行の昇進制度(目安)に対し見直しの声もチラホラ見かけます。

その矛先は、主に大関陥落後もハラハラする土俵を続けている正代や、4場所で大関の座を明け渡すことになってしまった御嶽海に向けられているものの、時として貴景勝に対して向けられる時もあります。

ある程度相撲を知っている相撲ファンであれば良いのですが、何となく「大関陣が~」と括られて報じられるので、世間一般的には貴景勝も「不甲斐ない大関陣」に含まれたニュアンスで伝わっている印象があります。

何だかもらい事故の様な感じがします・・・

10代で関取に上がり、早い段階から将来を期待されていた貴景勝、大関にも22歳7か月と歴代9位の速さで昇進、大関昇進後も度々優勝に絡み、少なくとも現在最も横綱に近い力士であることは間違いないはずです。

 

 

いや、朝乃山が。。。という方もいるかもしれませんが、朝乃山は現時点では十両力士であり、これから再び幕内上位を目指す力士です。

大関帰り咲きはそれほど容易でないことは、皆知っているはずです(別に朝乃山が嫌いなわけでは全くありません、あくまで番付の秩序などを言ってるだけです)。

横綱の品格とは

春場所、貴景勝の綱取りは果たして成功するのでしょうか?

その条件は唯一つで、春場所が終わった時に「2場所連続優勝かそれに準ずる成績」を収めているかどうかです。

そして貴景勝が、春場所後にその成績を納めることが出来るのか?は、現時点ではわかりません。

しかし、彼が綱を巻く資格を持つ力士であることはその姿が証明していると思います。

昔から話題になる言葉「横綱の品格」

成績だけではなかなか量ることが出来ないため、これまで多くの横綱がその無形の存在の答えを探し求めようとしてきました。

そして、多くの相撲ファン達の中にも、それぞれの「横綱の品格」が存在することだと思います。

貴景勝は、決して恵まれた体でないにも関わらず愚直に相撲と向き合い、一瞬の油断も出来ない土俵でここまで結果を残してきました。

背中に背負う「カッピング」の数だけ口には出さぬ痛みがあります。多くを語らぬ代わりに、その背中で多くのことを伝えてきました。

少なくとも彼は「横綱の品格」という言葉と向き合う資格と覚悟は既に持っているはずです。

綱取り場所は3/12に初日を迎えます。

 

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