10代関取は凄いのか?
春場所、初土俵から所要8場所というスピード出世を果たした新十両熱海富士。
元大関小錦や把瑠都に並ぶ歴代7位のスピード出世はもちろんですが、19歳という若さでの昇進も注目されています。
今回は、誕生すると何かと期待や注目をされる「10代関取」について調べていきたいと思います。
中卒から入門した力士であれば体づくりも含めて4年、高卒力士であれば足踏みしている暇はない2年、この短い期間で関取昇進を決めなければいけない10代での関取昇進。
これまでどんな力士が、10代で関取の座を射止めたのでしょうか?
平成以降の10代関取一覧
それでは、平成以降に10代で関取昇進をした力士の面々を見ていきたいと思います。世間的には未成年ですが、相撲界では一人前の関取になります。
(1990年代)※貴花田は89年 8名
貴花田(貴乃花):17歳2ヶ月
若花田(若乃花):19歳1ヶ月
巴富士:19歳4ヶ月
貴ノ浪:19歳3ヶ月
和歌乃山:19歳1ヶ月
魁皇:19歳5ヶ月
千代大海:19歳1ヶ月
栃東: 19歳5ヶ月
(2000年代) 6名
朝青龍:19歳10ヶ月
白鵬: 18歳9ヶ月
安馬(日馬富士):19歳10ヶ月
萩原(稀勢の里): 17歳9ヶ月
栃煌山:19歳5ヶ月
若ノ鵬:18歳5ヶ月
(2010年代) 6名
千代鳳:19歳4ヶ月
阿武咲:18歳5ヶ月
貴景勝: 19歳8ヶ月
貴源治: 19歳11ヶ月
(2020年代) 2名
北青鵬: 19歳9ヶ月
熱海富士: 19歳5ヶ月
10代関取はやはり凄い
平成以降の10代関取は全部で22名が誕生、平成以降約190場所ほど本場所を開催しているはずなので、1.5年に1名の十代関取が誕生している割合になります。
横綱誕生率脅威の27%!
数や割合云々よりもその中身が凄いです。
貴乃花、若乃花、朝青龍、白鵬、日馬富士、稀勢の里の6名が後に横綱に昇進。貴ノ浪、魁皇、千代大海、栃東、貴景勝の5名が大関。巴富士、和歌乃山、栃煌山、千代鳳、阿武咲の5名も三役昇進は果たしています。
実に10代関取を射止めた22名のうち、横綱昇進する確率が27%、大関以上で50%、三役以上になると昇進する確率は72%に跳ね上がります!
貴乃花-朝青龍-白鵬と、平成以降大きく優勝回数を伸ばし各時代の第一人者となった力士は、全て10代で関取昇進を果たしています。
コツコツ努力をして強くなることも大事ですが、やはり若いうちから出世も早かったことが分かります。
数字にすると分かる二人の凄さ?
こうして数字で現わしてみると、二人の横綱で新たに気付くことがあります。
まずは、2代目若乃花。
同時入門した弟貴花田が、史上最年少での昇進記録を次々と打ち立てていた為、出世の速さが陰に隠れ、苦労したように思っている方もいるかもしれませんが、一般的には出世スピードはかなり早く、兄弟揃って順調な出世だった事が分かります。
そしてもう一人は稀勢の里。
19歳での10代関取が並ぶ中、17歳という驚異的な速さで出世した稀勢の里だっただけに、その後苦労する時間が余計に長かったことが分かると思います。
しかし、大関挑戦で何度も跳ね返され、長く大関でも苦戦をし、それでも横綱昇進を果たせたのは、何より出世が早く時間があったからです。
稀勢の里のような超早熟晩成型力士(横綱)というのは、ある意味もう現れないのではないでしょうか?指導者として誰よりも多くの引き出しを持つ元横綱です。
10代関取数の減少
10代関取の出世率の高さから、その期待値を分かって頂けたかと思います。
しかし各年代ごとで見ていくと、最近では必ずしもそうとは言い切れなくなってきました。
90年代に誕生した8名の10代関取は全員が三役以上に昇進、大関以上の昇進者も6名。
2000年代は横綱昇進率が高く、6名中4名が横綱に昇進しています。
それに対して2010年代以降は、10代関取の誕生ペースも遅くなり、大関以上に昇進した力士も貴景勝の一人だけになっています(4名はまだ現役中です)。
この要因はどこにあるのでしょうか?
貴重な存在になる10代関取
10代関取の誕生が少なくなった背景は、単純に進学の問題ではないでしょうか?
以前は中学卒業後に入門するケースが多かったのに対して、現在は高卒や大卒での入門者が増えたため、そもそも10代関取に挑戦することが出来る力士が少なく、挑戦できる期間も短くなりました。
実はこの傾向は既に2000年代に入ってからのことで、2000年代の10代関取を日本人のみで見てみると、稀勢の里と栃煌山だけになってしまいます。
中卒で入門していればスピード昇進も期待出来た相撲経験者が進学を選ぶことで、10代での昇進に関しては間に合わなくなってしまうのです。
今後、益々減るであろう所謂中卒たたき上げ力士。
そんな中、10代で関取昇進を果たした希少な力士は、時代は変われど期待出来ることに違いはありません。
10代関取には、その後の出世も含めて注目していきましょう!