豊昇龍涙の初優勝
新大関霧島と貴景勝が初日から休場。唯一初日から出場した横綱照ノ富士も、「腰椎椎間板ヘルニア、腰椎椎体終板障害」のため、4日目から途中出場した霧島と入れ替わるようにして休場。
序盤戦から上位陣に落ち着きのない名古屋場所でしたが、大関取りを目指す3関脇が序盤戦から熱戦を繰り広げ、灼熱の名古屋場所をさらに盛り上げました!
そんな中12勝3敗で見事初優勝を飾ったのは関脇6場所目になる豊昇龍!
序盤から優勝戦線の二番手を走っていましたが、最後に逆転。千秋楽の本割と決定戦、解説の若乃花が言っていたように「一つでも失敗したらそこから崩れる」という緊迫した一番でしたが、見事な集中力で新鋭伯桜鵬と破壊力抜群の北勝富士を退けました。
これで10勝-11勝-12勝となり、場所後の大関昇進は確実となりました。最近はこの「3場所合計33勝」が決まりのようになっていますが、今場所の3関脇に関しては星勘定よりも「優勝すれば」という見方をしておりましたので、文句なしの昇進と言えます。
強い力士の相撲は、良い意味で「つまらない相撲」が多くなります。なぜなら白鵬の良く言う「型があるから」です。「こうなったら負けない相撲」で勝ち続けるので、つまらない相撲が多くなるのです。
投げ技や逆転技など、まだまだ引き出しを沢山見せてくれる豊昇龍。ワクワクさせる相撲を見せてくれるお相撲さんは好きですが、豊昇龍の目指すところは「業師」ではないはずです。
とは言え、番付の重みを証明する素晴らしい優勝でした。そして豊昇龍の「勝利に対する気持ち」は誰にも負けない強いものを感じます。他の若手力士も見習ってほしい。。。※幕下で負け越して泣いていたのを思い出しました。
来場所は新大関!叔父さんもきっと全力応援するはずです。
執念見せるも二桁届かず
豊昇龍と共に大関取りだった大栄翔と若元春でしたが、共に9勝6敗に終わりました。二人の直近3場所の成績を並べてみると、 若元春が11勝-10勝-9勝・大栄翔は12勝-10勝-9勝となり、大関取りは振り出しに戻ったと言わざるを得ないでしょう。
共に今年30歳を迎える同学年なだけに、年齢的にも今場所は大きなチャンスであり、最低でも二桁勝利を収めて来場所に繋ぐ必要性があるということは、二人とも理解していたのでしょう。
八角理事長の苦言をはじめ、賛否両論ありましたが14日目の変化、個人的には仕方ないと思います。
後半戦にかけて固くなる二人に、大関という地位の重みを再認識させられました。
勝っても負けても内容が良く、気持ちの良い大栄翔が「勝ち」に拘る姿にかえって感動しました。
同じ左四つの伯桜鵬との一番が後半戦に組まれていたら、、、若元春の巧さと粘り腰を見たかったです。
琴光喜が大関昇進を果たしたのは31歳3か月。まだまだチャンスはあります。
新入幕力士大躍進
名古屋場所は、新入幕の3人が揃って2桁勝利を挙げて三賞を受賞しました。
伯桜鵬:11勝4敗(敢闘賞・技能賞)
湘南乃海:10勝5敗(敢闘賞)
豪ノ山:10勝5敗(敢闘賞)
そんな背景もあり、三賞受賞者が史上最多の7名(これまでは1998年夏場所と2020年初場所の5人)。今場所は新入幕力士の活躍が目立ちました。
まずは11勝を上げ、新入幕ながら千秋楽まで優勝戦線に残った伯桜鵬。
その落ち着きぶりや技を繰り出すタイミング、そして何より目を引くのが体幹の良さ。崩れない!
「怪物」と言われるようなサイズ感や相撲のスケールが大きな力士の誕生というよりも、強くなる力士が上がって来る雰囲気の力士です。
好角家の中では、今場所10勝はいけるだろうと予想した方は多かったと思いますが、「上位陣と対戦して勝てる」という見解をした方は少なかったと思います。
優勝戦線に残ったことや11勝という勝ち星以上に、かなりのインパクトを残した「名古屋場所初体験の総髪幕内力士」。取り口を研究される来場所は進化が試されます。
先場所優勝決定戦で、その伯桜鵬を下して十両優勝を掴み取った豪ノ山。
初日から5連勝後、中盤以降は若干苦戦を強いられたものの、高安・隆の勝・玉鷲など元三役力士にも勝利を収め、阿武咲戦も内容は勝っていました。
三賞の掛かった千秋楽の相撲は「絶対に引かない」という執念が見え、先場所の決定戦同様、スイッチが入った時の押し相撲はギアが上がります。
幕内を代表する押し相撲力士はこれからも師匠譲りの電車道を行きます。
高校・大学・実業団と、アマチュア相撲で名を馳せた落合や西川に対して、相撲ファンの喜ぶ「中卒・未経験のたたき上げ」から新入幕を果たした湘南乃海。
幕下で時間が掛かった分地力を蓄え、十両は3場所で卒業、身長190センチ、体重180キロを超える恵まれた体格を活かした相撲で、新入幕10勝で敢闘賞を受賞しました。
どっしりとした相撲で、懐も深いので投げもあり、本人が言うように三役も狙える逸材です。
高田川部屋には体格に恵まれた力士が集まるものの、どうも不完全燃焼の印象があるので、湘南乃海にはそのジンクス?を破って欲しいと切に願っています。
灼熱場所を盛り上げた力士
先場所からの連勝を伸ばし続け、中盤戦まで「まさか」と思わせてくれた錦木。
覚醒という言葉がぴったりと当てはまるような雰囲気で、その腰の重さと力の強さをいかんなく見せつけてくれました。
終盤戦4連敗で終わってしまいましたが、照ノ富士からの金星をはじめ、初の三賞である殊勲賞受賞と、来場所は新三役も決定的です。
ここ数場所、私の中でも最も評価の上がった力士(上から目線ですみません)、三役も家賃が高いとは思いません。来場所も力強い相撲で、若手をなぎ倒して下さい。
序盤戦は錦木に注目が集まったため、その陰に隠れていた印象ですが、終盤一気にその存在感を増した北勝富士。
決定戦で惜しくも初優勝を逃してしまいましたが、場所後に控えた師匠の還暦土俵入りに花を添えるためにも、是が非でも勝ちたかったでしょう。
もしかすると、「最初で最後の・・」と思っている方もいるかもしれませんが、北勝富士は昨年秋場所も優勝戦線を引っ張ったことがあり、優勝の可能性を十分に持っている力士なのです。
居合のような一撃必殺の立ち合いは破壊力抜群、次のチャンスに向けて刃を研いで備えて下さい。
前頭16枚目と、後がないところまで番付を落とした遠藤でしたが、ここでは格の違いを見せつけ10勝。
正直最後まで優勝争いに加わってもらいたかった部分もありますが、まずは最低限の星は残せたかな?という印象です。
前回のブログにも書きましたが、まだまだその技術を見せて欲しい力士ですので、上位で相撲を取ってほしいですね。
久々の上位総当たりの地位に戻り注目されていた朝乃山、7日目の豊昇龍戦で腕を痛め休場しましたが、12日目から途中出場して4連勝。意地の勝ち越しを決めました。
現在は若手の底上げも強くなってきており、かつて言われた横綱昇進どころか、大関に戻ることさえ厳しい状況だと思いますが、右四つで型にはまった時はやはり強く、上位での存在感は光っています。
来場所は、改めて上位総当たりの場所で、照ノ富士はじめ上位陣が戻ってくるはずです。現在の朝乃山がどこまで実力があるのか?楽しみです。
序盤戦ほぼ五分の星だったため、優勝争いに顔をだすことはありませんでしたが、終わってみれば準優勝の星11勝を挙げ敢闘賞受賞の琴ノ若。
先場所から連勝中だった錦木の連勝を止め、豊昇龍にも勝利しています。
小結で4場所全て勝ち越し、今場所は初めての二桁。来場所は関脇昇進となるはずで、ようやく父に追いつきます。次々と飛び出して来る大関候補ですが、埼玉栄の後輩達にも負けないよう、今度は琴ノ若の番です。
来場所頑張ってほしい力士
最後に常盤山部屋後援会の私として。。。
まずは大関貴景勝。
全休は英断だったと思います。先場所意地の皆勤勝ち越しをご褒美と思って、少しでも状態を良くしてください。
一人大関でスタートした令和5年でしたが秋場所は三大関。先輩大関の意地を!
次に隆の勝。5連敗のスタート時はどうなるかと思いましたが、後半盛り返して部屋の関取としては唯一の勝ち越し。押し相撲の魅力と怖さを改めて感じさせてくれました。
とはいえ前頭8枚目での8勝は少々物足りないかと・・・。来場所は二桁を!
我らが貴健斗。7勝8敗と惜しくも1点の負け越し・・・あと1番勝っていれば(涙)最近特に思うのですが、序盤エンジン掛かるのが遅いような気がします。
押し相撲ですので、連勝と連敗になりやすいのは分かるのですが、出来れば連勝スタートをして欲しいなと・・・。秋は大勝で九州で新入幕を狙って下さい。
最後に常盤山部屋ではないですが、後輩の影響ですっかり毎場所その動向を追いかけ、気が付けば応援している平戸海。
番付的に今場所の苦戦は予想出来ましたが、成長をはっきりと見せてくれる相撲内容でした。怪我で千秋楽の休場は残念ですが、しっかり治して来場所は出直しです!
ということで、猛暑が続く中、力士の皆さん15日間お疲れ様でした。