サンクチュアリ -聖域-続編はあるのか?

※以下、若干のネタバレを含みます。未視聴の方はご注意ください。

Netflixで2023年5月4日から全世界に配信されている 「サンクチュアリ-聖域-」ですが、様々な場所で反響を呼んでいるようで、相撲ファンのみならず、これまで全く相撲に関心のなかった層の間でも話題になっているようです。

その証拠に、周囲から「相撲マニア」「相撲オタク」と認知されている私も「 サンクチュアリ」の内容に関して質問を受けることもあり、改めて知識を得ることで、更に楽しめる部分もあるのだなと感じることもありました。

そこで今回は、「ここを知っておくともっと面白くなる」「個人的な見解」この辺りを加えながら、サンクチュアリの内容に触れていきたいと思います。

これを読んでから改めてサンクチュアリを見て下さい。もっと面白く感じます。

十両と幕下の違いを知っておこう

サンクチュアリの内容以前に、これを知っておくことで新たに相撲の魅力を得られる重要な知識が「十両と幕下の違い」です。

大相撲には、序ノ口・序二段・三段目・幕下・十両・幕内という階級があり、雪駄が履ける、コートが着れるなど身に付けることが出来るものを始めとして、この階級こそが全てであり、「番付が一枚違えば家来同然、一段違えば虫けら同然 」と言われる言葉さえ存在します。

その中で「十両と幕下の差」というのは最も違いが顕著に現れる場所で、十両力士は給料がもらえ、付き人が付き、個室が与えられ、食事やお風呂も先に入ることが出来るなど一気に世界が変わり、相撲の世界において「一人前」と認められる地位こそが十両なのです。

どんなに兄弟子であろうが、年上であろうが、幕下以下は「若い衆」であり、最近入門した力士だろうがどんなに年齢が下であろうが、十両以上の力士は「関取」として扱われます。

 

幕下以下の力士は場所が終わると、「場所手当」と呼ばれるわずかな手当を受け取るだけで、兄弟子であろうが皆大部屋住まいで給料はないのです。

猿将部屋の力士達が、親方の部屋の前に並んで(封筒に入る程度の)場所手当を受け取り、大部屋に皆で雑魚寝していた光景を覚えていると思いますが、関取のいない猿将部屋では皆がその扱いになるのです。ちゃんこも兄弟子からの順番で食べていましたが、あそこに一人でも関取がいる場合は状況が大きく変わるのです。

ただし、「部屋の功労者で長く関取でいた力士」が怪我をしたりなどして幕下以下に番付を落とすケースもあります。その場合、もちろん公の待遇は幕下以下の力士として扱われるのですが、部屋においての扱いは特別のままでいるケースもあるようです。猿谷がまさにその例です。

 

 

相撲の稽古ってあんなに生々しいのか?

サンクチュアリは、冒頭から猿桜が土俵外に吹っ飛ばされるシーンで始まり、随所で流れる稽古のシーンが暴力的、生々しいなどという意見もあるようですが、相撲の稽古ってあんなに厳しい(生々しい)ものなのでしょうか?

稽古のシーンに関しては、サンクチュアリ関連の質問でも多いと思うのですが、恐らくあれはかなり抑えて演出しているのではないかと思います。

2000年代に入ってから相撲界の暴力事件が表沙汰になり、マスコミ含め世間が騒ぐようになったため、稽古であっても以前に比べると抑えめになってきた相撲界のようですが、往年の力士達が語る昔の稽古の様子から比べれば「軽め」の内容になっているはずで、倒れた力士の口に塩を含ませたり、羽目板まで吹っ飛ばしたりするなど当たり前の光景なはずです。

youtubeなどで昔の稽古風景を見ることが出来ますが、結構きついですよ・・・

作中「暴力的な表現が」という言葉が出てきますが、稽古の厳しさと暴力は別ものですので、相撲を見る時にそこの分別はして欲しいなと思います。

 

 

それぞれモデルはいるのか?

猿桜、猿谷、静内など登場する人物達のモデルとなっている力士や親方はいるのでしょうか?

こんな疑問もあると思いますが、恐らくはっきりとしたモデルは存在しないような気がします。

「不良でヤンチャだったガキ大将が相撲界でのし上がる」

こんなフレーズを耳にすると、その入門経緯や素行などから千代大海や朝青龍をイメージする方もいるかもしれませんが、「相撲界でこういったキャラクターや、背景を持つ力士や親方っているよな」という、多くのファンが持っている漠然としたイメージを具現化した登場人物たちの様な気がします。

ただし、息子に対して絶対に褒めない父と、息子に対して愛情いっぱいの優しい母。信心深く稽古場で笑顔を見せないなど、龍谷親方に関しては元横綱貴乃花と、その父である初代貴ノ花(二子山親方)の両人を足してモデルにしているのではないでしょうか?

猿桜、猿谷、静内現役時代強かった?

全8話を通して迫真の演技をした力士達。

サンクチュアリには元力士の方が多く出演されていらっしゃいますが、実際に現役中の成績はどうだったのでしょうか?

まず主人公「猿桜」を演じた一ノ瀬ワタルさんですが、元力士ではなく元格闘家の俳優さんです。しかし元格闘家ということもあって、今回は見事な身体を作って撮影に臨まれ、演技としても取組や稽古風景は迫力満点でした。彼なくしてサンクチュアリの大成功はなかったでしょう。さすがプロ。

その猿桜のライバルとして、(セリフはないながら)序盤からドラマを大いに盛り上げた怪物「静内」を演じる住洋樹さんですが、彼はかつて存在した中村部屋にいた「飛翔富士」という元十両の力士です。

晩年中村部屋閉鎖に伴い東関部屋に移ったのですが、その東関部屋の建物が今回静内が所属している虎空部屋として使用されています(現在白鵬が親方をつとめる宮城野部屋)。何とも縁を感じますね。

飛翔富士twitter
飛翔富士youtube

そして、こちらも序盤から活躍する猿将部屋の顔でもある「猿谷」。猿谷を演じる澤田賢澄さんは、現役時代千代の富士率いる九重部屋に所属していた「千代の眞(しん)」というお相撲さんでした。首の骨折など怪我が多く関取には届きませんでしたが、流石は元力士として重厚感のある取組や四股など見せてくれていました。奇しくもイケメンで知られた弟の千代の国関が先日引退されましたね。

澤田賢澄twitter

他にも多くの「元力士」が出演しているサンクチュアリですが、最も番付が高かった力士は誰か?と見返してみましたが、恐らく支度部屋で髷を結い直していた元幕内「大喜鵬」ではないでしょうか?

他にも元十両力士含め下記力士達が出演しているようです。

華王錦、霧の若、星風、城ノ龍、肥後ノ城、大勇武、水口、舛東欧、富栄、豪頂山、大神風、保志桜、吐合、露草、太牙、彩の湖、 安大ノ浪、木瀬乃若、北星海、北櫻龍

土俵外での問題提起

土俵以外の部分でも様々な描写がされていたサンクチュアリですが、相撲界周辺にある様々な問題?も作中では取り上げられていました。

親方同士の確執

犬嶋親方とそれに張り付く馬山親方、そしてその二人と対立する猿将親方と、親方同士の確執がありましたが、実際の相撲界でも現役時代の番付や部屋を超えた派閥争いや、 親方の娘との政略結婚のような縁談や、親方株を巡るお金の問題など、現役時代以上の熱い戦いが引退後も水面下で繰り広げられてるのです。

 

 

 

女将さんの存在

猿将部屋には、小雪さん演じる非常に頼りになる女将さんがいましたが、男社会の相撲部屋における女将さんの存在は非常に重要で、力士への教育(生活面やお金のことなど)、心のケア、食事面でのサポートなど、やることを探せば山のようにあります。

しかし、相撲部屋設立のために女将さんが必須なわけではないので、部屋によって女将さんの貢献度は天地ほどの差があるはずです。

部屋に関心のない女将、干渉し過ぎる女将など色々いるようですが、とにもかくにも猿将部屋は良い女将さんに恵まれましたね。

角界におけるSNS問題

自身の写真を盛んにSNSにアップしていた猿将部屋のイケメン力士猿岳、そして猿桜への嫉妬心から誹謗中傷を投稿していた兄弟子の猿空など 、力士と言っても若い男子。SNSで色々とUPしたくなる年頃です。

相撲界でもかつてSNSでの問題が起き、現在力士個人でのSNSは使用禁止となっています。このSNS問題は現在も賛否ありますが、再び解禁になるのはいつのことでしょうか??

 

グッとくるシーンは?

猿桜と敵対していた部屋の力士達も、次第に彼を認めて共に稽古に励むようになっていきます。

終盤に近付くにつれ、ウルウルくるシーンが増えてくるサンクチュアリですが、私の心を掴んで離さないのは猿谷です。

猿将部屋を長年引っ張ってきた猿谷ですが、膝の大怪我で番付を落としています。相撲における膝の怪我は多く、猿谷のように幕内で活躍して三賞まで受賞した力士が、膝の故障で幕下や三段目に番付を落とすケースはしばしば見かけます(猿谷の実の弟千代の国も膝の怪我で幕内から大きく番付を落としています)。

相撲の番付は生き物であり、毎場所ごとの成績で目まぐるしくその地位は入れ替わり、力士たちの待遇は変わるので、当然これまでの輝かしい功績があろうが、幕下以下に番付を落とせば待遇は「幕下」で、若い衆になってしまうのです。

化粧まわし(長い前掛けのような廻し)を付け、十両以上の力士達だけに許された土俵入りに向かう「関取」に背を向け、関取の象徴である大銀杏を結う支度部屋の力士を見る猿谷の気持ちを思うと、相撲ファンなら何とも複雑で切ない気持ちになるはずです。

フィクションではありますが、猿谷の断髪式には参加したかったですね(笑)・・・

サンクチュアリに続編はあるか?

さて、最後に今回のメインテーマである、「サンクチュアリに続編はあるか?」という疑問。

あくまで個人的な意見で言わせて頂くならば、「続編はない」正確には、「これで終わった方が良い」と思っています。

それは私だって続きはメチャメチャ気になります。関取になった猿桜や静内の活躍を見てみたい気持ちは大いにあります。

しかしこの物語は、「明日を夢見る名もなき力士達」が主人公だからこそ深みや人間臭さが生まれる名作になっていると思うのです。

プロスポーツにおけるトップレベルが舞台になってしまうと、「技術」で物足りなくなってしまう部分が出てくるはずです。

名もなき高校の野球部は感動のドラマを生むかもしれませんが、その選手が「メジャーに行って大谷と勝負する」となると、途端に安っぽい内容になってしまいます。

猿桜と静内の勝負の行方や彼らの行く末を、相撲ファンだけでなく世界中の人々が想像するからこそ、物語が広がっていくのです。

 

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