遠藤はなぜ人気があるのか?

夏場所を「両膝関節捻挫」により中日から休場した遠藤。
この名古屋場所は、十両までもう後がない、「前頭16枚目」という地位まで番付を下げて迎えることになりました。

元々悪かった膝の怪我の影響もあり、全盛期に比べると力の衰えは感じつつありますが、女性ファンを中心に相変わらずその人気は底堅く、番付の位置に関わらず、常に多くの声援を受ける人気力士であり続けています。

遠藤が、なぜこれほどまでに根強い人気を誇るのか?

今回は今更ながら「遠藤」にスポットを当てて、その魅力を改めて検証してみたいと思います。

相撲エリート遠藤

その前に、まずは入門までの道のりを簡単にご紹介させて頂きます。

「相撲エリート」として広く知られている遠藤ですが、小学生の頃から相撲を始め、中学・高校と実績を残し、高校卒業後は相撲の名門日本大学の相撲部に入部しました。

「日本大学の相撲部」と言えば、全国で名を馳せた相撲エリート達が集う名門校ですが、遠藤はここでも1年生からレギュラーとなります。

その後4年次には主将となり、学生選手権において団体戦で優勝。個人戦においても、幕下付け出しの資格対象となる2つのタイトル「アマチュア横綱」と「国体横綱」を獲得しました。

国体横綱を含めたこの2つのタイトルを手にしたことで、当時まだ一人(市原)しか前例のなかった「幕下10枚目格付け出し」として初土俵を踏める資格を獲得し、その進路が注目されることとなります。

ちなみに遠藤が日大相撲部の主将(4年生)だった時代、下の学年には誰がいたのか?少し興味があったので調べてみました。

3年生:剣翔、大翔丸、紫電
2年生:翔猿、大奄美
1年生:美ノ海、對馬洋
※遠藤の1学年上に、英乃海と石浦、3学年上に常幸龍がいます。

現在関取として活躍する力士が多数いたことが分かります。話は逸れますが、大学や高校での上下関係を頭に入れて相撲観戦をすると、また違った楽しみ方が出来ると思います(あ、先輩だ。顔は張れないよな・・とか)。

 

 

相撲人気復活の象徴

日大を卒業した遠藤は、2013年に同じ石川県・日大相撲部出身で、こちらも同様に元アマチュア横綱だった元幕内大翔山が率いる追手風部屋に入門し、初土俵を踏みました。

2013年と言えば、新弟子に対しての暴行事件、横綱朝青龍の不祥事による引退、大麻問題、野球賭博、八百長問題など不祥事が立て続けに起きて、どん底状態だった相撲界の人気が、ようやく「徐々に回復してきた」タイミングでした。

その実績から大きな注目を浴びた遠藤でしたが、期待にそぐわぬ大活躍を見せます。幕下をわずか2場所で通過すると勢いそのまま、新十両でも14勝を挙げて優勝。デビューから1年も経たぬ4場所目には新入幕を果たします。

「若貴フィーバー」という社会現象的な相撲人気が終わり、土俵の主役がモンゴル力士となっていたこの頃、閉塞感のあった相撲界において突如彗星のように現れた日本人力士遠藤は、まさに相撲界における希望の星でした。

デビューしたばかりで、まだちゃんこの味も染みついていない遠藤ではありましたが、当時のそういった背景や大人の事情もあり、マスコミからは「相撲人気復活の象徴」「相撲界における次世代の旗頭」のような存在として大々的に扱われるようになります。

当時の遠藤の扱いを見ながら、さすがにまだ時期尚早だと私も思いましたが、あの頃の相撲界は、「日本人力士として将来を期待できる力士」が登場してくるのを待ちきれない空気が明らかにありました。

入門して1年もたたぬ間に「相撲界の顔」としての責務を負わされた遠藤。膝の大怪我を負いながらも無理して土俵に上がる姿への大声援は、むしろ残酷なものに聞こえたものです。

遠藤の魅力

遠藤がどんな力士であり、ここまでどのような相撲人生を歩んできたのかを知って頂いたところで、いよいよ「力士遠藤」の魅力について考えます。

漢は黙って仕事をする

デビュー当初から、そんなプレッシャーだらけの土俵生活だったにも関わらず、一切文句を言ったり嫌な顔をせずに自分の仕事をやり切る「漢は黙って」の姿が遠藤の魅力の一つです。

本場所、巡業、花相撲・・・どこに行っても女性ファンに囲まれ人気者の遠藤ですが、浮かれず調子に乗らずただ淡々と・・・

インタビュールームにおいても無駄な口を一切聞かず、こちらも淡々と・・・まさに昭和の力士。

「お相撲さんらしい力士」そこが遠藤の魅力の一つです。

膝に大怪我を負っての相撲人生ではありますが、泣き言を言わずに土俵に上がり続け、テーピングいわゆる白いものを身に付けないところもまた、「力士」ですね。

正攻法で綺麗な相撲

遠藤の魅力の一つとして、相撲の美しさがあります。

時として大きな相撲を取る時もありますが、遠藤の相撲は、飛んだり跳ねたりしない所謂「正攻法で綺麗な相撲」です。

立ち合いの速さ、低さ、廻しを取った時の巧さや投げ、廻しの切り方など、その相撲を通し、四つ相撲の魅力を存分に味あわわせてくれます。

個人的には、前捌きの巧さや、時折見せる出し投げなどは、大好きな技の一つです。

「相撲が巧い力士は誰か?」

そう聞かれたら迷わず答えましょう、「遠藤」と。

とにかく華がある

「遠藤の魅力は何か?」と聞かれた時、「イケメン」と、その容姿を答える相撲ファンは多いと思います。

一般的には、よほど有名な力士(若貴、朝青龍、白鵬クラス)でない限り、横綱大関の上位陣であっても認知されているか?というのは怪しいのですが、その中でも遠藤の知名度は高く、そのイケメンぶりは広く知られています。

私が思う遠藤最大の魅力、それはイケメンぶりも含めたその「華やかさ」です。

着流しで歩く姿、土俵上での所作、花道を歩く姿、番傘をさす姿・・・・

遠藤が繰り出す一挙手一投足に”華”があり、その姿を見た多くの人が「美しいお相撲」だということを感じるはずです(色気があるとも言えますが)。

この華やかさに関しては、残念ながら稽古で身に付けることが出来ない持って生まれた才能の一つです。

※最近では若隆景がその要素を持っているように思います。

 

 

これからの遠藤

デビュー当初から相撲人気復活の責務を背負いながら10年近く幕内の土俵を守ってきた遠藤も、今年の秋場所後には33歳を迎え、すっかりベテラン力士の一員となりました。

怪我の影響もありここまでの最高位は小結(4場所)と、恐らく当初マスコミが期待していた将来像通りにはなっていないはずです。

遠藤の少し後、同じように学生相撲出身のエリート力士としてデビューした御嶽海は、相撲人気が高まる中で同世代の若手達と切磋琢磨して大関まで昇進しました。

遠藤は登場した時代が早すぎた悲運の力士なのでしょうか?

そんなことはありません、遠藤は相撲人気がV字回復していく中で、非常に大きな貢献を果たした力士であり、彼があのタイミングで登場してくれたのもまた、相撲の神様が遠藤という力士に与えた運命であり、宿命だと思っています。

人気が回復した今、遠藤には土俵で対戦する力士達に身をもって「技術を体感させる」という役目が残っており、その先には、その素晴らしい「技術の継承」をするという重要な責務が残っております。遠藤の力士人生はまだまだ続きます。

腹タッチ会の賛否が話題になりましたが、少し前に遠藤を前面に出した「お姫様抱っこ」の企画の時は、賛否にすらなりませんでした。

そんなドン底状態だった相撲人気を、現在の連日満員状態に戻した功労者遠藤、暑さが強敵となる灼熱の名古屋場所ではありますが、いつもの涼しい顔から繰り出す熱い相撲を期待しています。

 

にほんブログ村 格闘技ブログ 相撲・大相撲へ
遠藤はなぜ沢山の人に人気があるのか?
最新情報をチェックしよう!
広告

遠藤その他の記事