3年ぶりの冬巡業開催-長崎巡業-
12月3日(土)、3年ぶりとなる冬巡業が長崎市で行われ、長崎市出身の平戸海や對馬洋には、会場を訪れた3100名の来場者からひと際大きな拍手が送られたそうです。
会社の後輩のご当地力士、いわゆる「クニモン」ということもあり、幕下に上がったばかりの頃からその成績に注目してきた平戸海ですが、昨年新関取としてご当所場所を迎え、今年は幕内力士としてご当所に戻ってまいりました。
数年前まで「平戸海」と検索を掛けると、「平戸の海」が表示されていたものですが、現在は力士「平戸海」のWikipediaが真っ先に表示されるようになり、確実に知名度を上げてきた平戸海ですが、同時に評価する声も多く耳にするようになってきました。
大相撲中継での解説陣は当たり前ですが、希代の天才力士3代目若乃花の花田勝氏をはじめ、藤井アナ、貴闘力など他のチャンネルや、SNSでもその相撲ぶりや相撲に対する姿勢への評価は高まっており、良い意味で知名度が広がっています(個人的には若乃花に評価されるのは素晴らしいと思います)。
ここ数年順調に番付を上げてきた、叩き上げの22歳力士。
今回は「なぜ平戸海が愛されるのか?」ということを分析していきたいと思います。
稽古は嘘をつかない
昔、「努力は必ず報われる」という言葉が少し流行ったような記憶がありますが、平戸海が評価される要因の一つがその稽古量です。
平戸海の話題になると「稽古量」の話になることが多いですが、一日50番~60番は取るそうで、多い時には100番にもなるとか?
20番取れば多い方という話を聞く相撲界の中でも、群を抜いて稽古をしていることが分かります。
昨今は効率を重視する論調ですが、その中で「量」を日々黙々とこなしている姿勢はもちろんですが、しっかりとそれが報われていることに、周りも評価と好感を持っているはずです。
本場所の土俵で、あのパンパンに張った体を見れば、黙っていても稽古を十分にしてきたことが分かります。
昭和が漂う佇まい
「平戸海の笑顔」と言われてとっさに思い浮かべることが出来るでしょうか?
最近は饒舌に話が出来る力士も増えてきましたが、かつてのお相撲さんは話すのが苦手なインタビュー泣かせの力士も多くいました。
新入幕の秋場所時点で幕内最年少、22歳の青年に「昭和」というのは失礼かもしれませんが、土俵内外で多くを語らず、物言わぬ姿勢に多くの中高年相撲ファンは心を打たれているはずです。
「勝負は「勝者」と「敗者」がいる神事、だから喜怒哀楽を見せてはいけない」などと口にする力士もいますが、平戸海からはそういった類の匂いを感じ、最近では貴景勝を連想させます。
前に出る姿勢
立ち合い踏み込んで左前みつを取る平戸海の相撲ですが、たとえまわしが取れなかったとしても、簡単に引いたり叩いたりせずしっかりと前に出ます。激しく突いて出てくる力士に対しても、我慢して下から跳ね上げ前に出ます。
時には叩かれたり立ち合いの変化で負けることもありますが、「前に出て負ける」ことに関しては決してマイナスではなく、「目先の白星よりも内容」です。次回の対戦で修正すれば問題ないのです。
恐らくこんな相撲内容や、土俵姿勢も好感を持たれる理由でしょう。
力士のインタビューで皆よく口にしますもんね、「前に出る相撲」って。
「漢境川」を継承する力士
相撲ファンの中では有名ですが、境川部屋と言えば「漢を磨く場所」です。
相撲界きっての伝統部屋は「出羽海部屋」ですが、師匠境川親方(元両国)の影響もあり、本家以上に昔気質な雰囲気や伝統、日本の心を継承する境川部屋。
メディアによく登場したり、情報発信に積極的な比較的近代的な匂いのする部屋とは対照的な存在であり、代表する力士も最高傑作豪栄道をはじめ、妙義龍、佐田の海など饒舌な力士ではなく、最近は関取が長く誕生していませんでした。
そんな中、最近の若者にも関わらず、その伝統と姿勢に憧れ、見事に継承している平戸海には、古き良き力士を重ねている昔ながらの好角家も多いのではないでしょうか?
中卒たたき上げ
大相撲の魅力の一つとして、「番付による待遇差」や「体格や見た目の変化」というものがあります。
ようやく髷を結えるようになったり、体格が一回り大きくなったり、、、三段目で雪駄が履け、幕下で博多帯、コート、そして長い年月をかけて関取として紋付。
この工程を、大きな楽しみとしている相撲ファンも多くいるはずです。
しかし、最近では高卒や大卒出身力士も増え、その活躍は目覚ましいものがあり、幕下付け出し資格を得ることで、いきなり体格の出来上がった幕下デビューはもちろん、デビュー半年後、1年後には関取というケースもあります。
そんな中、徐々に体を大きくし、着実に出世してきた平戸海の相撲道に熱い視線を送るファンは多いはずです。
郷土を背負って
力士のしこ名には、幾つかの名付け方がありますが、その一つに「地元にまつわるものに由来」という付け方があります。
例えば、地元の山の名前や街の名前から取ったりなどがありますが、平戸海の場合「そのまま」地名を背負っています。
数多ある競技(スポーツとさせて頂きます)の中で、出身地を●●市まで案内したり、全面に出す競技は相撲位ではないでしょうか?
だからこそ、「江戸の大関より郷土の三段目」という言葉が生まれるのです。
地元のヒーロー、観光大使として今日も土俵に上がります。
これからの平戸海
どちらかと言えばミーハーの相撲ファンよりも、往年の相撲ファン達に愛される漢平戸海ですが、今後どこまで出世できるでしょうか?
174cm、133キロと、幕内では決して恵まれた体型でないにも関わらず、これまで勝てなかった相手にも勝てるようになるなど、間違いなく場所ごとに力をつけていますので、22歳まだまだ期待はできます。
幕尻で二桁勝った九州場所でしたが、幕内上位の実力者阿武咲や明生には、まだまだ及ばず、来場所は相撲も覚えられてくることでしょう。
来年は正念場と飛躍が入り混じった大事な一年になるはずです。
同期生の大卒力士が引退し、他の力士もベテランの域に入りますが、平戸海はここからが本場です。
2年連続アマチュア横綱を獲得した中村泰輝選手が話題になっていますが、同級生筆頭の誇りにかけてまずは三役目指して頑張って欲しいですね。
平戸海の郷土での師匠坂尾さんや、平戸海のお母さんも熱心に応援されていらっしゃいますが、一番のファンは、活躍に目を細めている弟子に厳しいことでも知られる境川親方かもしれません(笑)