力士が相撲協会に残らないこれだけの理由-松鳳山断髪式-

松鳳山断髪式

2月11日、昨年6月に現役引退をした元小結松鳳山(最後は放駒部屋)が、両国国技館で断髪式を行ったそうです。

約400名が髷にはさみを入れた断髪式、最後は引退時の師匠ではなく、入門時の師匠であった元大関若嶋津が大銀杏を切り落とし、松鳳山は力士人生に別れを告げました。

引退時の会見で、「食事で苦労するアスリートは多い。そういう人のサポートができたら」と飲食関係の仕事を目指していた松鳳山ですが、 既に親方として相撲協会には残っておらず、現在は焼き肉店開業のための物件を、所属した頃の部屋があった船橋市内で探しているそうです。

「昔ながらの、服に匂いが付くようなコテコテの焼き肉店をやりたい」 そんなコメントも残していましたが、多くの相撲ファン達がその夢が一日も早く叶う事を祈っているはずです。

 

 

相次ぐベテラン力士の引退と退職

それにしても最近は、ベテラン力士が引退後、一時的にも協会に籍を置かず、そのまま退職するケースが増えているような気がします。

昨年秋場所、当時幕下33枚目に番付を落としていた元小結常幸龍が、相次ぐ怪我を理由に引退を表明しました。

また昨年九州場所では、前頭12枚目の千代大龍が、まだ負け越しさえ決まっていない中日に、「体に力が入らず、これ以上ぶざまな相撲を取るのは応援している方々に申し訳ない。」と、突然の引退表明。

同じ九州場所千秋楽後、今度は元幕内で十両4枚目の豊山が、「理想とする相撲が最近取れず、日常から体がうまく動かせない」などの理由で、こちらも引退を表明。

常幸龍は、木瀬親方も「そろそろかなという気持ちだった」と言うように、 怪我も重なっていたこともあり、引退は仕方ないと思う方も多かったと思いますが、千代大龍と豊山の二人は驚きの引退表明でした。

特に千代大龍は、9月場所の時点で親方に相談していたとはいえ、幕内で負け越してもいない段階での引退表明であり、相撲ファンからすれば青天の霹靂でした。

そして、この三人に共通するのは、松鳳山同様に、引退表明後すぐに相撲協会を退職したことです。

これまでの事例であれば、仮に親方株を正式に取得出来なかったとしても、空いている株を一門内で手配して借りるなど、一時的にでも相撲協会に籍を置き、給与をもらいながら第二の人生に備えることを選択したはずです。

彼らはなぜ、相撲協会に残るという選択肢を取らなかったのでしょうか?もしくは取れなかったのでしょうか?

親方株が不足

「残りたかったが親方名跡がなかった」

引退後すぐに退職を選択した理由。まずはこちらの理由から・・・

この問題はこれまで何度も取り上げてきており、様々な方もコメントしていますが、一つもメリットを感じない相撲協会を衰退へ導く問題だと思っています。

もしも、今回取り上げた松鳳山を含めた4名の力士の中で、本当は協会に残りたかった力士が相撲協会に残れていたら、あと数十年は協会のために活躍できたはずです。

今回、年寄名跡が取得できずに退職という結果になっていたとすれば、優秀な人材をみすみす切ってしまったということになり、協会にとっては大きな損害以外の何者でもありません。

本当に相撲協会のことを考えているのであれば、年寄名跡は「伝統や文化」などと言ってはいけない問題だと思いますが。。。

 

 

そもそも残る気がない

力士側が相撲協会に残るつもりがなかった。

こちらの理由は、前段の逆です。

今回の4力士ですが、松鳳山が駒澤大学出身、豊山が東京農業大学出身、千代大龍が日本体育大学出身、常幸龍が日本大学出身と、全員が大卒力士です。

もしかすると彼らにとっての相撲協会は、「就職先」であって生涯しがみつく場所でなかったのかもしれません。

周囲の大人たちが主導となって話を進め、中学卒業後すぐに相撲部屋に入門する時代であれば、「相撲協会」こそが自身の居場所であり、その中でのルールが法律だったのかもしれませんが、22歳が自分で決める入門は、「進路選択」なのかもしれません。

そうなると、若者たちが新しい業界や世界を選択したとしても不思議ではありません。

長く関取として活躍した力士は、無給となる幕下陥落が決まった時点で引退を表明します。逆を言えば、最低でも年収1000万を超える十両に在位している限りは現役を続けます。

しかし今回の豊山は十両4枚目で5勝10敗。来場場所も十両在位は確定の勝星で、千代大龍に至っては後半戦次第では幕内在位も可能な勝敗でした。

「みいとらんど」の用意周到ぶりな店舗出店をみると、相撲協会は競技者としてのみ所属する場所だったのかもしれません。

残らないことを選択した?

当初は残りたい気持ちがあったものの、徐々に退職の気持ちが強くなった、もしくは揺れ動く中で協会を離れる選択を選んだのかもしれません。

松鳳山は、松ヶ根部屋(若嶋津の部屋)出身の中で出世頭の力士です。引退後の話が一度もなかったとは考え難く、常幸龍は日大出身の元学生横綱であり、千代大龍もまた付け出しデビューの力士。

一昔前であれば引退後の年寄株手配を、入門条件に掲げることもあったようですので、そういった選択肢も引退までの中で本人達にあった可能性もあり、その中で「残らない選択」をしたのかもしれません(金額の問題かもしれませんが)。

また、千代大龍の九重部屋は、千代の富士の急逝により、親方株が入れ替わっており、豊山の所属する時津風部屋も、こちらは幾度かの不祥事により、親方株の持ち主が変わっています。もしかするとその中で、相撲協会の嫌な部分を見たのかもしれません。

いずれにせよ、入門前の実績・入門後の番付を見た時、協会に残り、親方ちゃんねるの運営に関わっていても何ら不思議のない顔ぶれです。

年始早々に豊ノ島も退職しましたが、次々と相撲協会から若い親方が退職してしまうのは非常に残念です。

 

確実に相撲協会にとってマイナスになっているこの問題を、何とか解決して頂きたいと思っています。

そして松鳳山の焼肉屋さん、ちょっと遠いですが食べに行きたいと思っているのは私だけではないはずです。

 

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