最後のドルフィンズアリーナ
7月28日、 ドルフィンズアリーナ で行われる最後の場所となった、令和6年名古屋場所が無事に幕を閉じました。
少し遅れてしまいましたが、今回は名古屋場所を個人的な観点、感想で振り返ってみたいと思います。
とその前に、今場所が現ドルフィンズアリーナで開催された最後の場所となりましたので、まずはこのドルフィンズアリーナ (今回はあえて「愛知県体育館」と呼びます)での本場所の歴史をちょっとだけ振り返ってみたいと思います。
戦前の大相撲では、1月場所と5月場所の年2回が本場所だったため、「名古屋場所」というのは「準本場所」という位置づけの場所でした。
その後、3月大阪場所、11月九州場所と相撲人気と共に本場所の数が増えていく中で、昭和33年に本場所同士の期間が空いている7月に本場所に昇格したのが、現在の「名古屋場所」でした。
以前何かで読んだ記憶では、名古屋は地理的に東京(1月)と大阪(3月)の途中に位置していたので、準本場所時代は、移動の途中である2月に場所を開催していたました。
当初名古屋場所は、金山体育館で行われていたそうですが、当時は冷暖房設備がなかったため、 通路に氷柱を置いたり、休憩の際には場内に酸素ボンベで酸素放出などして涼をとっていたようです(北の富士さんもテレビ中継で語っていました)。
現在の愛知県体育館に会場が変わったのは昭和40年。そこから約60年間、数々のドラマを生んできた会場が幕を閉じるわけです。(昭和40年名古屋場所番付では、佐田の山・大鵬・柏戸・栃ノ海の豪華4横綱が名を連ねます)
名古屋と言えば、気候の熱さから体調管理が難しく、「荒れる名古屋」と言われ、(最近はそうでもないですが)平幕優勝力士や初優勝(その1回のみ)力士が誕生する場所として有名でした。
平成初期の琴富士→水戸泉の2年連続平幕優勝は最初で最後ではないかと言うほどの快挙であり、今でも「荒れる」と聞くと琴富士の優勝を連想してしまいます。更に時間を戻すと、金剛や高見山の優勝も名古屋場所での偉業でした。
しかし身体の大きな力士にとって、名古屋場所の時期は本当に暑いことでしょう。灼熱場所とはよく言ったものです。生活環境が異なる地方場所で、かつ体調管理のしにくい季節。荒れる理由も納得できます。
長々と名古屋場所の歴史について綴ってしまったので、この話はここまでです。
照ノ富士10度目の賜杯
名古屋場所は、横綱照ノ富士が12勝3敗で自身初の名古屋場所での優勝を飾り、以前から目標にしていた10度目の優勝を達成しました。
休場が続いていた照ノ富士に関しては、今場所は休場して秋場所に進退をかけると思っていたので、今場所の出場を聞いた時「最後の力を皆に見せるのか、、、」と、今場所一杯で引退の可能性が高く、まさか優勝、いや、優勝に絡むことさえないと確信しておりました。
このことに関しては、「横綱の実力を見縊っており、大変申し訳ございませんでした。心より謝罪いたします。二度とこのようなことは言わないよう気をつけます。」
15日間あると「強い相撲」が出せず不利な体勢になることもありますが、横綱の守備力は抜きん出ており、「負けない相撲」でも他を圧倒していました。
終盤戦は膝の疲労などもあったのか?失速した感じはありましたが、決定戦は流石の強さ。攻めと守りが同居した相撲で賜杯を手にしました。
やはり「優勝が横綱」というのは、全体がこう「グッ!」と締まりますね。少しでも長く土俵に君臨して下さい。
これで「全開催場所での優勝」を果たしたことになります。※令和2年7月場所優勝を果たしていますが、その際はコロナの影響で東京開催。
歴代の力士の中で、全6場所全てでの優勝を果たしている力士は全部で11人(当然全員横綱)、下記納得の顔ぶれです。
大鵬(31)、北の富士(10)、北の湖(24)、輪島(14)、千代の富士(31)、曙(11)、貴乃花(22)、武蔵丸(12)、朝青龍(25)、白鵬(45)、照ノ富士(10)
三役陣は奮起を望みたい
奮闘した横綱に対して大関以下の三役陣ですが、今回は厳しめに、、、個人的に及第点は新小結で10勝、技能賞を受賞した平戸海だけでしょう。
琴櫻は大関で10勝なので悪くはないと思うのですが、「結果的に10番勝っている」という感じです。大の里や照ノ富士への勝利で盛り上げてはいるのですが、「東大関」です。負けて盛り上がる存在にならないと上には上がれない、、、
豊昇龍は最近、「終盤気が付くと優勝争いに絡む」そんな存在ですが、最後勿体なかったです。休場がなければ巴戦?の可能性もあったかもしれないのに、、、
「連続優勝なら大関か?」と、場所前注目を浴びた大の里でしたが、二桁届かず。大関取りは振り出しに戻ってしまいました。
新関脇での9勝、殊勲賞受賞なので普通の力士なら十分評価出来ますが、そこは大関以上を期待される力士の宿命。9勝のうち豊昇龍戦は不戦勝というのもありますし、、、ともあれ、ここで止まる力士でないことは誰もが知っています。
関脇阿炎ちゃんは好きなんですが、関脇で不戦勝込みで8勝、微妙ですね、、、常に何かしそうで誰が相手でも期待しちゃうんですが、ここ最近の小結関脇渋滞状況の典型な気もして、、
こんなこと言ってますが、阿炎ちゃん好きなんですよ。幕内優勝の賞状をもう一枚取らせてあげたいです。
千秋楽勝って8勝7敗と勝ち越した霧島ですが、残念ながら大関復帰はならず。個人的には「霧馬山」に戻して欲しい気もします。霧島になってから程よく霧島に収まっている感じが、、大関復帰出来る実力はあるはずなので、魁傑・照ノ富士に続く救済使用なし2度目の昇進を!
そして苦しい土俵が続き大関陥落となってしまった大関貴景勝。秋場所に全てをぶつけるでしょう。
三賞もう一声欲しかった!美ノ海!
今場所の三賞力士3人。隆の勝、大の里、平戸海。この3人は納得しますが、一つだけ納得いかないが美ノ海です。技能賞与えて欲しかった、、、
私の中で今場所最も評価が変わったのが、美ノ海でした。こんなに相撲上手かったんだ(ファンに怒られそう)。三賞に関しては「1つにつき一人でなく良い派」なので、こんな時は残念に思います。
その他今場所、目立った力士を挙げていくと、、、
まずは当然隆の勝です。優勝決定戦で照ノ富士に敗れたものの、12勝3敗で優勝同点。以前のブログで「一度優勝してほしい」というようなことを書きましたが、あと一歩でした。それにしても千秋楽は本割も決定戦もいい相撲でした。再び三役そしてその先も狙えるのでは?
そして今場所、「大相撲史上最も美しい前頭14枚目」だった若隆景と遠藤。それぞれ11勝と10勝。若隆景はまだまだここから、遠藤は十両陥落した際は心配しましたが、こちらももう一花咲かす実力を証明しました。共に三賞候補にならないのは流石!
今場所、横綱が優勝して締まった一方で、全体的に(特に幕内)停滞した場所になった印象がしました。
期待されている若手や実力者含め、9勝・8勝・7勝・6勝と、世代交代の狭間的な停滞を感じました。(表現力不足ですみません、十両の阿武剋のような来場所もまだ止まらなそうな雰囲気がないということです)
来場所は再び両国国技館にお相撲さん達が戻ってきます。
二場所続けての強い横綱、関脇を経験した大の里次の爆発、新入幕の阿武剋、王鵬・湘南乃海・豪ノ山・熱海富士から誰が抜け出すか?色々楽しみです。
新小結で三賞を受賞した平戸海を見て後輩が喜んでいますが、「挑戦」だけすれば良かった立場が、徐々に狙われる存在にもなってきます。もう平戸海も次のステージに足を踏み入れているかもしれません。
個人的には貴景勝の秋場所には、初日から注目していきたいと思っています。9月が今から楽しみだ。
最後に東前頭十枚目正代 直也、10勝してました。