相撲界に存在する様々な隠語
相撲界には沢山の隠語と呼ばれる、いわゆる(相撲界独特の)業界用語が存在します。
たとえば相撲の世界でよく使われている「金星」という言葉がありますが、これはご存知のように「平幕力士が本場所の土俵で横綱に勝つ」という意味だけでなく、「綺麗な女性」を指す言葉として、相撲界の隠語でとして広く使われます。
その他にも相撲界の隠語は存在しており、
「エビスコ」→大食い
「家賃が高い」→番付が高すぎる
「顔じゃない」→力がまだ足りない
「北を向く」→機嫌が悪くなること
など、 枚挙にいとまがないほど様々な業界用語が存在します。本当はもっと紹介したいところですが、それはまたの機会ということで、今回はそんな中でも私の好きな言葉を1つ紹介します。
ちゃんこの味が染みる
私が好きな相撲擁護、それは「ちゃんこの味が染みる」という言葉です。
相撲を好きになってからいつの間にか知っていたのですが、今回初めてwikipediaで正確な意味を調べてみると「入門した新米力士が稽古に励み、 精神的にも肉体的にも相撲界に馴染んできた様子」とあります。
非常に分かりやすく簡潔に書いてありますが、”精神的にも”という部分に相撲界独特の深みがあるように感じます(昭和の運動部にある闇的なことではなく)。
肉体的な部分というのは、個々の素質やそれに勝る稽古量で時間軸を縮めることが出来ると思いますが (実際にとっている力士の方には失礼かもしれませんが) 、精神的な部分というのは、一朝一夕では難しい部分ではないでしょうか?
外国籍の力士が増えることに比例して、昨今取り上げられる意識や文化の違いに関する問題。この辺りの原因を深堀していくと、この「精神的な」という所に行きつくような気がします。※別に外国籍の力士がNGと言っている訳ではないです。
日本人でさえ戸惑う、相撲界独特の文化。全ての事柄に歴史があり意味を持つ相撲界において、文化が染みわたり真の力士になるには近道がなく、それなりの時間がかかるという言葉だと捉えています。
そう、相撲界では「ちゃんこの味が染みることは非常に大切なのです。
ベテラン力士が伝えるちゃんこの味
相変わらず学生相撲出身力士が多いですが、出世が早い力士はちゃんこの味がしみつく前に関取になってしまうので、あまり下積みがなく付き人教育をしていくことになってしまいます。
しかし力士は番付を上げていくことが最大のミッションなので、出世が早いことは良いことです。むしろそれを目標にしています。
ちゃんこの味をしっかりと伝える事が出来るのは、むしろ若手の関取衆ではなく、長く部屋に残るベテラン力士ではないでしょうか(本当の意味でのちゃんこの味も含めて)?
華吹、北斗龍ベテランの味
そんなこともあって、現在相撲界にいるベテラン力士を見まわしてみると、相撲界の文化をしっかりと伝えてくれそうなベテラン力士が今も頑張っています。
昭和入門の古参力士で1986年入門同期生の華吹(立浪部屋)と北斗龍(山響部屋)。
華吹は師匠である旭豊の兄弟子にあたり、北斗龍は師匠である巌雄と同期生。もはや「ちゃんこの味」どころかレジェンド級です。北斗龍と同じ部屋の天一をはじめとした平成5年3月入門組などもまだまだ健在。
こういった相撲界という文化がじっくりと染みわたった力士達には、親方から若い力士への教育面での期待もあると思います。長くとり続けることに批判的な声も正直ありますが、一方で一ノ矢のように、長く相撲を続けたからこそ部屋をサポートできる存在もいるわけです。
ベテラン力士達には、気がすむまで相撲を取り続けるだけでなく、 しっかりと「ちゃんこの味」を継承していって欲しいと思います。