木瀬部屋で違法賭博関与が発覚
昨年末、木瀬部屋に所属している幕内英乃海と幕下紫雷が、埼玉県内の違法賭博店に出入りして賭博に関与した疑いがあると明らかになりました。
木瀬親方の判断により、初場所両力士は謹慎で全休をしているのですが、15日二人とも賭博行為への関与を認めたそうで、場所後の27日に最終的な処分が決定される見通しだそうです。
最近では、コロナウィルスのガイドライン違反を除けば大きな不祥事がなかった相撲界でしたが、年明け早々荒れそうな雰囲気です。
弟翔猿が刺激となってか、昨年は幕内二桁勝ち星と自己最高位を更新していた英乃海。日大相撲部出身ながら長く幕下上位で苦戦が続き、ようやく新十両昇進を果たした紫雷。両力士とも本当に残念なことです。
相撲協会のガイドラインを違反した阿炎や竜電らとは重さが異なり、今回は法に触れる行為です。一般的な観点からすれば、朝乃山が1年間謹慎していることを考えてそれ以上であることは間違いないでしょう。
両力士への処分も気になりますが、木瀬部屋では過去に起こった不祥事の際、もう二度と問題を起こさないという誓約書を書いているという話ですので、親方の処分はもちろん、所属力士にも影響してくる部屋の存続に関しても大いに気がかりです。
一度閉鎖している木瀬部屋
木瀬部屋には過去一度閉鎖した経緯があります。
2009年の名古屋場所において、一般的には出回らない土俵下の維持員席(審判の後ろに座布団を敷いて座っている桟敷席の一種)で暴力団幹部が観戦をしており、この席の確保に木瀬親方が関与していたのが2010年の5月に発覚しました。
木瀬親方は委員から年寄への2階級降格、清見潟親方(木瀬親方に確保を依頼)はけん責処分とされましたが、この時の相撲協会からの処分はそれだけではなく、木瀬部屋は所属する出羽海一門の北の湖部屋「預かり」となり、事実上の消滅となりました。
2009年名古屋場所という1年前の出来事で、しかも長きに渡っての行為ではないにも関わらずこの処分。個人に対しての処分内容は理解できますが、 部屋消滅に関しては異例の重い処分でした。
あくまで推測ではありますがちょうどこの頃は、琴光喜を中心に力士の暴力団を胴元とする「野球賭博への関与」が噂されていた時期だったので、暴力団絡みの出来事に相撲協会全体が神経質になっていた背景もあるのではないでしょうか?
野球賭博と八百長でも処分
結果的にこの野球賭博の噂は本当であり、木瀬部屋閉鎖直後の名古屋前には、当初噂されていた琴光喜だけでなく、野球賭博関与者27名とそれ以外の違法賭博関与者49名が処分、一時は名古屋場所開催が中止になる可能性もあったほどの大きな出来事に発展してしまいました(NHKの生中継は中止)。
更に不祥事はこれだけでは終わらず、野球賭博の調査において今度は八百長事件も発覚、朝青龍の暴行事件や貴の乱から始まったこの年から、数年間にわたる相撲人気の暗黒期が始まるのです。
この二つの事件が起きた時、木瀬部屋は存在していませんでしたが、野球賭博・八百長共にかつて木瀬部屋所属だった清瀬海が処分されており、当時師匠だった木瀬親方も両事件では処分対象となっています。
このように紆余曲折あった木瀬部屋でしたが、その後閉鎖処分が解除されて2012年4月から再び再開、現在に至っています。
木瀬部屋ってどんな部屋?
ここまでは不祥事の話になってしまいましたが、実際に木瀬部屋はどんな部屋なのか?というのを簡単にご紹介したいと思います。
関取率脅威の36%
現在の木瀬部屋は、現親方が引退後に当時所属していた三保ヶ関部屋から独立して2003年に開設した新しい部屋ですが、10年以上経過しても関取輩出がままならない部屋がある中、現役の顔ぶれだけ見てみても幕内で宇良、志摩ノ海、英乃海。十両に目を向けてみても徳勝龍、美ノ海、紫雷と合計6名の関取が所属しています。
幕下以下にも元三役常幸龍、元幕内明瀬山、元十両大成龍と3名の元関取。所属25名の力士中関取経験者が9名という、所属数が多いにも関わらず驚異的な関取率を叩き出している部屋です(関取数も凄いですが)。
※引退した力士の中にも多くの関取経験者がおりました。
臥牙丸、清瀬海、木﨑海、德真鵬、肥後ノ城、希善龍、髙立
木瀬部屋の稽古環境が凄い
木瀬部屋では稽古に集中させるため、数々の環境が充実しており力士の出世を後押ししています。
稽古の様子をビデオ撮影して再生するためのテレビモニターが設置してあり、自分の取組を客観的に確認することが出来ます。
力士の数が多く、タイプの異なる多くの関取が所属しているので、稽古相手にも事欠くことがありません。
怪我を防止するために稽古場には冷暖房完備、殺菌性の強い水を土俵に撒き、稽古は自主性に任せ、師匠が怒るようなことが殆んどないそうです。
怖そうな顔をしている親方なので昔ながらの恐ろしい稽古をしていそうな気もしましたが、なかなか合理的な部屋の印象を受けます。
北の湖イズムがここにも残る
木瀬部屋が一時閉鎖になった際、力士達は北の湖部屋に所属していました。
この2年間、北の湖親方は木瀬部屋の力士達を自分の部屋の力士と同じように可愛がってくれ、木瀬親方自身も様々なことを学んだそうです。
今も稽古場に掲げられている北の湖の写真。
優勝した徳勝龍は、左四つの形を北の湖から学んだというような話をどこかでしていたような気がします。
部屋の強さを生み出す沢山の要素の中に、北の湖親方のイズムも混ざっているのかもしれませんね。
部屋の存続は今後の決定次第
今回は木瀬部屋について、過去の不祥事と部屋の凄さ、表と裏をご紹介しました。
英乃海と紫雷の違法賭博への関与、両力士に対しての処分は恐らく厳しいものになるとは思いますが、木瀬親方に関してどこまで処分が下るのか?は現在のところ不明です。
誓約書の存在も一部では言われてはいますが、力士の育成やスカウティングに関してはこれまで成果を上げてきていると思いますので、部屋がなくなるようなことは避けて欲しいと思います。
とにかく月末での決定を待ちましょう。