英乃海、紫雷、春場所から出場
昨年末、違法賭博店への出入りと賭博関与が発覚した幕内英乃海と十両の紫雷。
謹慎休場中の二人にどのような処分が下されるか?
相撲ファンの注目が集まりましたが、相撲協会が下した処分はまさかの結果になりました。
英乃海は出場停止1場所と2カ月の報酬減額20%。
紫雷はけん責。(師匠の木瀬親方は厳重注意 )
ちなみに、英乃海の処分にある出場停止1場所というのは、先日行われた初場所が対象になるので、英乃海、紫雷共に春場所は初日から出場出来ることになりました。
今回の処分からすれば、初場所謹慎で禊が済み、この問題は終了になったと言うことになります。
ガイドライン違反>違法行為の図式
この処分に対しては、相撲ファンだけでなく多くの方が納得しておらず、特に朝乃山のファンなどは到底受け入れることが出来ないはずです。
外出禁止期間中に外出したことはもちろん悪いことですが、あくまで協会のガイドライン違反。
一方の違法賭博行為は、反社会的勢力が関わっていなかろうが違法です。※違法というのは、法律を破っているという意味です。
にも関わらず、来場所英乃海は関取として十両の土俵に上がり、幕下陥落する取的の朝乃山は休場でさらに番付を下げます。
今回の処分が、なぜキャバクラよりも軽いのか?という質問に対しての説明は、「ガイドライン違反の場合は、違反者が感染して本場所に持ち込み力士の生命を脅かしたり、本場所が中止になる可能性があったかもしれない。違法賭博に関しては、周囲への影響がなく、反社会的勢力と関係がなく、外出禁止期間でもなく、賭け金も高くなく常習性がなかったから」というものです。
たしかに協会運営という立場から見れば、集団感染に繋がっての本場所開催中止になった場合の損益は計り知れませんが、この説明を聞いて「なるほど!だからか!」と納得した方は恐らく少数であったはずです。二人を応援してきたファンや関係者の方は、現役を続けられることに安堵している一方で、複雑な気持ちも混ざっている方もいらっしゃるかもしれません。
なぜ処分が軽かったのか?
以前の記事でも書いたように、私は最低でも1年以上の謹慎と思っていましたが、結果的には今回の処分内容になりましたので、今回の二人の処分がなぜこの程度ですんだのか?について私なりに考えてみました(あくまで個人的な見解です)。
そもそも妥当な処分だった
英乃海と紫雷の処分が「軽い」と思っている方は、違法賭博という単独行為に対しての処分を軽いと感じているよりも、むしろガイドライン違反の処罰内容に対して軽いと感じている方が多いはずです(私もそれは思っています)。
しかし今回違法賭博を行った力士に対して、これまでの事例を参考にして考えれば「全くない」とは言い切れないのかもしれません。
2010年に起きた「大相撲野球賭博事件」。
こちらは違法カジノではないですが、同じような違法賭博行為です。
この時の処分内容を思い出してみると、雅山、豪栄道、豊ノ島、隠岐の海など、有名どころの力士だけでなく幕下に至るまで1場所謹慎休場、当初申し出なかった松鳳山が2場所謹慎休場。賭け額が小さかった嘉風らの力士はお咎めなしとなっています。
最終的に書類送検された関係者は30名以上に上りましたが、結局解雇されたのは、琴光喜(当初嘘をついた&賭け額が大きい)と貴闘力(賭け額大きい)、古市(所謂元締め)の3名だけでした。
このように、同じ賭博問題に揺れた2010年の処分と比べると、今回の処分は「妥当」と受け取れないこともありません、、、
阿炎の処分が重すぎた
今回の二人の処分内容ですが、世間的に比べる対象になっているのは、前述したようにガイドライン違反、特に朝乃山の「6場所出場停止」ではないでしょうか?
そしてその処分をさらに辿っていくと、この朝乃山処分の基準は阿炎の「3場所出場停止」になります。
平幕力士がガイドラインを破って3場所休場であれば、協会の看板力士である朝乃山はもっと重い処分が必要になるので6場所(当初は嘘もついていましたので)。何となくそんな雰囲気で決まったような処分内容に思えます。
あの当時は、相撲協会も今以上にピリピリと神経質になっていた時期だったので、ガイドライン違反に関してはまさに「見せしめ」の意味もあったわけです。機嫌の悪い時に、怒らせてしまった「間の悪さ」を感じます。
結局その基準が朝乃山のガイドライン違反を処罰する基準になってしまったので、キャバクラで6場所出場停止という、相撲史に永遠に残るような不祥事になってしまったわけです。
阿炎に対しての重すぎた処分内容が、その後に起きる不祥事への処分内容の評価基準になってしまっている印象を受けます。
大勢の違反者が出る可能性あり
これはあくまで憶測になりますが、「これ以上深堀すると大変なことになりそうだから」というように、小事のうちに終わらせようという狙いです。
2010年の野球賭博問題の時、発覚当初は「正直に申し出れば処分はない」だったと記憶しています。
しかしふたを開ければ予想以上の力士から申し出があり、一時は本場所開催の危機にまでなる大事になってしまいました。
相撲協会の説明にもあったように本場所を開催出来ないことこそが、社会的にも収入的にも相撲協会としては最も恐れる事になるので、この問題は初場所中で終わらせて、何事もなく春場所を迎えたかったのかもしれません。
明確なルールづくりを
ここまで色々と書いて来ましたが、個人的には今回の処分内容は軽いと感じています。
貴源治が昨年解雇されましたが、大麻の使用に関してはこれまで一貫して全員が解雇になっているように、ガイドライン違反でどうやら規定があるようです。
同じように今回の賭博行為など「法に触れたケース」の処罰も再考するべきです。以前の賭博問題の際、あれほど大量に申告者が出てきたことから分かるように、相撲界での賭けごとに対する感覚は少しずれているはずです。もう少し、世間の見方も含めて明確な基準を検討した方が良いのではないでしょうか?
こういった不祥事が起きた際、必ず世間は色眼鏡で相撲協会を見てきます。今後も処分対象になるようなことが起きた場合のためにも(起きないことが望ましいですが)、周りを納得させるような基準と対応を今後の相撲協会には期待しています。