豊昇龍と貴景勝、行司軍配差し違い?
令和4年夏場所中日の「正代VS豊昇龍戦 」と9日目の「貴景勝VS若隆景戦 」の判定が一部で物議を醸しています。
簡単に説明すると、まず中日の「正代VS豊昇龍戦」。豊昇龍が正代の寄りに土俵際で下手投げを打ちましたが、正代の寄りが有利と見て「正代」に軍配。
続いて9日目「貴景勝VS若隆景戦」。こちらは貴景勝の押しといなしに若隆景が一瞬手をつきかけたものの、何とか残して逆に叩きこんで「若隆景」に軍配。
どちらの取組も結果は以上の通りで物言いは付きませんでしたが、取組後にビデオ再生で見直したところ、冒頭のように物議を醸すことになったのです。
「豊昇龍VS正代戦」
豊昇龍は確かに体が倒れているものの正代の足の甲も返っており、どちらかと言えば豊昇龍が有利と見る意見の方が多い結果に。
「貴景勝VS若隆景戦」
こちらに至っては明らかに若隆景の手が先に土俵についており、行司軍配差し違いの一番に。
この二番を巡って様々な意見が出てきましたが、この騒ぎ一体何が問題だったのでしょうか?
審判委員の対応が原因
今回の一件、一体何が問題だったのかを結論から言ってしまうと、「審判委員が物言いを付けなかったこと」です。
今回のような差し違い疑惑があった際「行司がしっかり見ていない」という意見を見かけますが、行司さんは結果が見えていようがなかろうが、必ずどちらかに軍配を上げなければいけないのです。
今回のケースで言うと、正代の足の甲が返っているのか?豊昇龍が先に出ているのか?瞬間的に判断出来なくても、流れの中でどちらかに軍配を上げなければいけないのです。
だからこそ「物言い」が重要な役割を果たします。
「物言い」を調べると、「行司が下した判定(軍配)に対し、審判委員や控え力士が異議を唱えること」と有ります。
実際に相撲を取っている力士達は、たとえ行司軍配に対して不満や不服があったとしても、異議を唱えることが出来ません。
取組結果に対して審議を問うことが出来るのは、土俵下に控える審判委員だけなのです(控え力士もですが今回はあえて外します)。
異議を唱えることで、改めて取組内容をビデオ判定含めて精査するが出来るので、「貴景勝VS若隆景戦」などは明らかに差し違いが分かるはずです。
物言いを付けないことで、勝った力士も負けた力士も(場合によっては行司さんも?)モヤモヤして終わってしまいます。
もしも今回の2番に審判委員が物言いを付けていれば、たとえ結果が変わらなかったとしても、もう少しモヤモヤは和らいでいたかもしれません。
相撲にもリクエストを導入すれば?
野球がお好きな方からすれば、「相撲もリクエストを導入すればいいのでは?」と思われるはずです。
相撲にリクエストは存在しませんが、ビデオ判定はあります。
1969年春場所、横綱大鵬の連勝がストップし、後に「世紀の大誤審」と呼ばれた判定がきっかけとなり大相撲にもビデオ判定が導入されました。
ビデオを判定の参考に用いるということにおいては、野球界よりもかなり前から行っているのです。
ただしこれも物言いが付き、審判委員が必要と思った際に参考にされるだけですので、審判が不要と思えば参考にはせず、そもそも物言いがなければ全く意味がないのです。
そして、相撲の勝敗において最もやっかいなのが「体がない」というやつです。
「体がない」ってなに?
今回の 「豊昇龍VS正代戦」 において「足の甲が返っていた」という表現がありましたが、これがいわゆる「体がない」というやつです。他に「死に体」とも言われます。
余計に分からない方もいるかもしれませんが、この「体がない」というのは、簡単に言ってしまうと
「体が残っていても逆転出来ない状況・倒れているのと同じ状況」
厳密にはもっとしっかりした説明があるのだと思いますが、相撲観戦をする中では、そんな風に思って頂ければよいと思います。
今回のケースで言えば「正代の足の裏が見えている状況=もう体は倒れている(逆転はない)」ということです。
しかしこの「体がない」や「死に体」というが昔から曲者で、人によって捉え方が異なるだけでなく、力士によっても解釈が異なってきます(この力士なら逆転出来るなど)。
さらに、「流れの中で」などというやっかいな表現を使う人もいるので、余計にややこしくなることもあります。
怪しきは確認すべき
ということで、少し話が逸れましたが、改めて結論を言えば、今回の2番は物言いを付けるべきでした。
初場所後に理事選が行われ、今場所から新たに審判部に配属された親方も多くいます。
始めての部署への配属ということで、物言いのタイミングや空気感が掴めていないということも影響していたかもしれません。
しかし、力士にとってはその1番「勝つか」「負けるか」で大きく異なり、審判委員の親方達はファン以上にそれを理解していると思います。
ぜひ疑わしきは。。。でお願いしたいです。
後半戦に入り、積極的に物言いがつくようになったのは非常に良かったと思います。今回の2番が、新たな審判委員の成長・土俵の充実に繋がることを願っています。