今年11月には39歳を迎えるベテラン
突然ですが質問です。「現在、幕内で最年長の力士と言えば誰でしょうか?」
相撲ファンにとっては簡単な質問ですね、そうです38歳の玉鷲です。
今年の11月16日には39歳を迎える玉鷲なのですが、一学年上の松鳳山や一つ下の隠岐の海らが力を落として次々と引退していく中、この春場所も前頭筆頭の地位におり、序盤戦苦戦はしているものの、幕内上位陣と白熱した取組を連日繰り広げております。
相撲ファン達の中では広く知られている、そんな玉鷲の「鉄人ぶり」ですが、今回は「なぜ玉鷲は長く現役を続けられているのか?」を一緒に考えていきたいと思います。※個人的な見解も大いに含みますが。
ビバ玉鷲!
38歳幕内上位での活躍
「玉鷲がなぜ長く現役を続けられるのか?」の前に、まずは「玉鷲の凄さ」を改めて皆さんで共有しましょう!
玉鷲の凄いところ、それは38歳の年齢にも関わらず幕内上位で活躍出来ていることでしょう。
ここ最近で「ベテラン」と言われる域まで相撲をとった三役経験もある力士を、何人か例に挙げて見てみたいと思います、、、まずは元関脇安美錦の現安治川親方。
安美錦は、40歳を超えるまで関取として活躍した名力士でしたが、現在の玉鷲の年齢である38歳当時は、大怪我を負い十両で相撲をとっていました。
その後39歳での最年長再入幕を含め、2度の入幕と敢闘賞受賞(103場所ぶり2度目という快挙)もしましたが、結局幕内上位には戻れずに2019年名古屋場所、40歳で土俵を去りました。
続いて若貴時代に活躍した名関脇若の里、現在の西岩親方。
力強い相撲が持ち味で長く幕内上位で活躍した若の里は、19場所連続三役という数字が示すように大関まであと一歩と迫った力士でしたが、38歳の時は引退間際で、すでに十両の土俵に上がっていました。
時代を少し遡り昭和のベテラン力士と言えば、往年の相撲ファンなら誰もが知る元小結の大潮がいます。
千代の富士に抜かれるまでの通算勝ち星数の記録を持ち、通算出場記録に至っては現在も大潮が保持する記録です。そんな大潮も38歳の時は十両の土俵に上がっていました。
ここまで見て頂くと、現在の玉鷲が「かなりイイ線行っている」のが分かると思いますが、角界にはかつて鉄人ならぬ「レジェンド」も存在していました。
現役時代に、角界のレジェンドと呼ばれた元関脇旭天鵬、現在の大島親方は、玉鷲と同じ38歳以降も幕内の土俵で活躍をし、史上最年長40歳8か月での幕内勝ち越しや、40歳での三賞受賞も果たしています。
そして今よりも、スポーツ医学が発達する前の昭和初期の相撲界において、40歳まで幕内力士を勤めた元大関名寄岩もいます。
鉄人と呼ばれるようになった玉鷲ですが、この先40歳まで現役を続けるうえで、目標とする力士はまだまだ存在するようですね。
もう一つ玉鷲の凄いところは、ベテランと言われる年齢にも関わらず、真っ向勝負の突き押し相撲を貫いていることです。
息もつかせぬ攻防を繰り広げ、引いたりせずに真っ向から相手を押し出す玉鷲の相撲は、まだまだ金星を獲得できるだけでなく、38歳目前の37歳10ヶ月で、なおも史上最年長幕内最高優勝を飾れるほどの実力です。
恐るべし力士玉鷲。
玉鷲が長く相撲を取れる理由
それではここからは「玉鷲がなぜ長く相撲をとれるか?」について検証してみましょう。
家族思いの玉鷲
一番のモチベーションは「家族愛」でしょう。
玉鷲が連続出場する理由が「場所後の休みで家族と旅行に出かけるため」というのは有名で、その家族への愛情が深いことは広く知られています。
この春場所は自身の付け人も務め、長く幕下上位の壁に阻まれ続けた苦労人で義理の弟「玉正鳳」がついに関取昇進を果たしました。
玉正鳳は、「玉鷲がこの年齢で頑張っているから、自分もまだまだやれると思える」そう語っています。弟のためにもまだまだ老け込むわけにはいきません。
いつまでも若々しく元気な玉鷲は、家族のために今日も元気に相撲をとります。
大きな怪我がない
「家族愛」は少し抽象的な話ではありましたが、玉鷲が長く現役を続けられている理由の一つとして、「力士人生を左右するような大きな怪我をしていない」ということが挙げられると思います。
これまで、大きな期待を背負いつつも膝の大怪我などにより、その後の土俵人生を大きく狂わされてしまった力士が何人もいます。
その点玉鷲は、これまで大きな怪我を負っての休場がなく(そもそも休場がないですが)、現時点において「最終的にはここが致命傷になるかな?」と思わせるような怪我もありません。
身体は決して柔らかい方ではないそうですが、足首が柔らかいらしいので、激しく動く玉鷲の相撲において大きくプラスになっているのかもしれません。
※これだけ長く現役を続けているからには、当然怪我が全くないということはあるはずもなく、恐らく満身創痍だとは思うのですが、、、
相撲年齢の若さ
話も競技もガラリと変わりますが、甲子園で活躍した投手は、高校時代から体を酷使しているため、プロ野球に進んだのちにトミージョン手術をするなど、現役後半は怪我がちになったり、怪我に苦しむケースをしばしば見かけます(桑田投手、松坂投手など)。
逆にメジャーに渡った後も長く現役生活を続けることが出来た、野茂投手や上原投手、黒田投手などは高校時代は甲子園出場経験がないだけでなく、全国的にも無名な選手であり、それがかえって体を酷使しなかったことになり、現役生活を長く続けることが出来た要因に繋がったとも言われています。
モンゴル出身力士の多くが、モンゴル相撲や日本での相撲経験があるのに比べて、ホテルマンになるため日本に留学していた玉鷲は殆んど相撲経験がありませんでした。
玉鷲が30歳を超えて強くなった理由の一つとして、「元々熱くなりやすい性格が30歳を超えて冷静に相撲を取れるようになった」というのがあるそうですが、そもそも相撲を覚えたのが遅かったため、相撲年齢が若く、体を酷使していないというのがあるのではないでしょうか?
以前37歳の玉鷲が「まだ27歳」発言をしておりましたが、体としてはその通りなのかもしれません。
全国の玉鷲ファンのために
これは勝手な想像ですが(ここまでも個人的な見解ですが)、全国に数多いる玉鷲ファンのために、少しでも長く現役を続けるために頑張っているのも理由の一つかもしれません。
以前もご紹介したように、玉鷲のファンサービスは神です。玉鷲のことが嫌いな人はいないのではないか?と言う程ファンを大切にしています。
そんな玉鷲だからこそ、全国には応援してくれる多くのファンがいるはずです。玉鷲が少しでも長く現役を続け、活躍し続けることで相撲ファンが喜ぶ。
それが玉鷲が長く現役を続けるモチベーションなのかもしれません。
群れない漢玉鷲
多くのモンゴル力士が、モンゴル力士同士で群れる中、情が移ってはいけないと、玉鷲はずっと一線を引いてます。
白鵬や日馬富士、鶴竜など、多くの上位陣を輩出するモンゴル力士達がいる中、気を使うこともなく、マイペースに相撲がとれている玉鷲。
ささいなことですが、それもまた彼が長く相撲をとれる要因の一つなのかもしれませんね。
これからも、多くの相撲ファンと群れながら(笑)、一日でも長く「現役最年長関取」でいてほしいなと思っています。
頑張れ、玉鷲!