多くの心配の中で開催が危ぶまれていた大相撲春場所。
無観客での開催が決まった後も、様々な問題を指摘されながら
初日を迎えました。
無観客開催
序ノ口や二段目の土俵で上位陣が相撲を取るような感覚なのかと、
始まるまでは想像できませんでした。
(それでも少しのお客さんはいますので)
そして放送開始後も、淡々と進む土俵にしばらくは違和感がありました。
しかし、幕下上位辺りからでしょうか?
騒めきのない場内で、光も音も土俵だけにスポットが当たる
そんな不思議な感覚になり、いつも以上に集中したテレビ観戦になりました。
力士はお客さんの歓声が励みや力になると思います。
特にご当所の力士が登場した際は「いつもならここで歓声か」と
思ってしますのですが、無音の館内というのも趣があることを知りました。
無観客開催における見所。
本場所や巡業など、普段は騒めきに掻き消される音が、
今回はテレビ越しではありますがはっきりと聞こえます。
取組における力士の息遣いや立ち合い当たる音。
(初日の白鵬が遠藤に放った張り手は微妙でしたが)
力士の鍛え抜かれた身体の強さや、重厚感を感じることが出来ます。
力士が四股を踏む音や、柏手を打つ音。
特に横綱土俵入りでは「よいしょ」がないので、
四股の音と共に土を払う音も聞こえます。
行司や呼出しの声も、本来よりもしっかりと聞き取ることが出来るので、
個性ある声や張りのある美しい声を楽しむことが出来ます。
声だけで聴くと、思っていたよりも大きな声だったり、
伸びのある声だったりと・・・。
何より無駄な音がないため、
神事の色を濃く感じることが出来、
館内全体から神聖な印象を受けます。
横綱土俵入り時、横綱が土俵中央において四股を踏む際、
背後の行司が「シー」と言ってから横綱は四股を踏みます。
これは本来「静粛にしなさい」という警告なのですが、
通常の場所ではなかなか聞き取ることが出来ません。
こんな小さなことも、今場所はしっかりと堪能することが出来るのです。
そして、八角理事長による協会挨拶。
このタイミングで大相撲を開催する意義を、
大相撲の神事における側面を説明しながら見事に伝えたと思います。
「床山が髪を結い、呼出が柝(き)を打ち、行司が土俵をさばき、
そして力士が四股を踏む。この一連の所作が人々に感動を与えると同時に
大地を鎮め、邪悪なものを押さえ込む」
正直なところ協会挨拶を聞き入ったのは初めてです。
理事長就任後、何かと初動の遅さや決断力などを責められることが
多かった八角理事長ですが、今回の挨拶は多くの相撲ファンに感動を
与えたのではないでしょうか?
土俵上だけに注目が集まる今回の春場所。
色々な部分に注意して観戦すれば、
今まで気付かなかった、見落としていた
相撲の文化や歴史のカケラを発見できるかもしれません。
ぜひ残りの13日間も無事に乗り越えて下さい。
頑張ろう大相撲!