店内には北の湖も稀勢の里も稽古した土俵が
両国界隈には沢山のちゃんこ屋さんがあり、それぞれ素晴らしい味やサービス、佇まいを持っていますが、「相撲部屋の稽古場や土俵をそのままの姿で利用したお店」というと多くは存在しておらず、僅かにあるだけです。
今回ご紹介させて頂く「ちゃんこ増位山」は、両国の南側に位置する森下で、今なお相撲部屋の佇まいだけでなく、在りし日の稽古場や土俵をそのままに残してあるお店で、その前身は元三保ヶ関部屋になります。
あの憎らしいほど強い横綱北の湖や、北天佑、最近では稀勢の里も部屋の土俵で稽古をしており、当時の土俵そのままに、現在はちゃんこ屋さんとして営業をしています。
三保ヶ関部屋ってどんな部屋?
三保ヶ関部屋は、師匠だった元大関増位山の定年に伴い、2013年9月に約60年の歴史に幕を閉じましたので、最近の相撲ファンは「三保ヶ関部屋」と聞いてもあまりピンと来ないかもしれません。
しかし、北の湖が全盛を誇っていた70年代中盤~80年代初頭にかけては、常に優勝旗が持ち返られるほど隆盛を極めた部屋で、北天佑や増位山(2代目)といった大関も所属していたため、その頃から相撲を見ているファンにとって「三保ヶ関部屋」という響きは、何とも懐かしい名前ではないでしょうか?
北の湖の時代が終わると、学生相撲出身の肥後ノ海(木瀬親方)や濱ノ嶋(尾上親方)、最近ではエストニア出身の大関把瑠都(所属時は幕内)などが所属しており、現在店舗にある土俵上で、皆稽古で汗を流してきたのです。
ちなみに部屋を閉鎖した後、約1年間間だけ、新設中の田子ノ浦部屋が使用していたので、稀勢の里や高安もこの土俵で稽古を行っていました。
ミリオン演歌歌手で元大関増位山
こちらのお店を運営しているのが、第10代三保ヶ関親方であった元大関増位山です。
高校卒業後、父であり師匠である第9代三保ヶ関親方(元大関初代増位山)の元に入門、同部屋で同期にはあの北の湖がいました。その後大関まで昇進。優勝こそありませんでしたが、左右から繰り出す鮮やかな内掛けが有名で、技能賞を5回受賞しています。
引退後は、師匠の定年に伴い三保ヶ関部屋を継承し、関脇阿覧、小結濱ノ嶋(尾上親方)、幕内肥後ノ(木瀬親方)、把瑠都(移籍後大関に昇進)などを育てました。
増位山は現役中演歌歌手としても活躍し「 そんな夕子にほれました 」は120万枚、「 そんな女のひとりごと 」では130万枚を売り上げました。
その後、相撲協会が副業を禁止にしたため、歌手活動を休止しておりましたが、定年退職を機に現在は歌手として活動を行い、ちゃんこ増位山でも度々美声を聞かせてくれているそうです。
三保ヶ関部屋は継承者が現れなかった為2013年閉鎖になりましたが、元々料理人だった息子さんが稽古場、土俵をそのまま残して現在のお店を開きました。
三保ヶ関部屋の佇まいを残す
ここまで部屋の歴史などをご紹介してきた「ちゃんこ増位山」ですが、土俵や稽古場が残っているという話題だけでなく、ミシュランガイド東京にビブグルマンとして2017年~2018年と2年連続で掲載されたミシュラン店でもあります。
4,000円から鍋をメインにした3つのコースがあり、一番人気は9品で構成されている6,050円のコースだそうです(私も食べました)。三保ヶ関部屋で実際に力士達が食べていたという「鶏つくね醤油ちゃんこ」を頂くことが出来ます。
コース内容(全9品)
・力士味噌 きゅうりと共に
・鶏皮のポン酢和え
・相撲部屋の鰹のタタキ
・秘伝 手羽先
・厚焼玉子
・鮭のハラス焼き
・鶏つくね醤油ちゃんこ
・雑炊 又は うどん
・ゆずシャーベット
もちろん一品料理も充実しています。
当日は6,050円のコースを頂きました。
部屋の佇まいや、稽古場・土俵の雰囲気を含めると、海外から来たお客様を連れて行くと喜ばれるお店ではないでしょうか?
ちゃんこ増位山
墨田区千歳3-2-12
森下駅徒歩約3分・両国(都営線)駅徒歩約9分・両国駅東口徒歩約10分