夜中にネットニュースで流れてきて驚きました。
そして、この部屋の不遇な運命を感じずには入られません。
春日山部屋時代から始まるこの部屋の悲しい歴史。
ここまで色々なことが立て続けに起こると、そもそもこの部屋の原形が
何だったのかも分からなくなってきます。
正当な継承者春日富士が興した春日山部屋
今回話題になっている中川部屋ですが、以前は元幕内の春日富士が興した
春日山部屋でした。現役時代後半は安治川部屋所属だった春日富士ですが、
元々は春日山部屋に入門した力士であり、当時の春日山親方(大昇)定年に伴い安治川部屋に移籍していました。
1996年に春日富士は引退すると春日山を襲名し、自身の育った川崎に春日山を設立、神奈川県初の相撲部屋と話題になったのを覚えています。
かつての親方だった大昇が何かのインタビューで、若き日の春日富士のやんちゃぶりを懐かしそうに話すと共に「近頃の若いものは偉い」と褒めていたことを思い出します。自身が育てた唯一の幕内力士に名跡を譲り、弟子が自身の育った街に新たに部屋を再興する。当時の私は最高の形でバトンが渡された!と感動していた記憶があります。
突然の退職と部屋継承
神奈川県初の相撲部屋、韓国シルムのチャンピオン春日王の入門など、
メディアで紹介される機会も増え部屋設立から6年ほどたった2002年には、
その春日王が韓国出身初の十両に昇進(その後幕内にも昇進)。
その後力士の数もそこそこ増え、相撲部屋としての歴史を刻み始めていた春日山部屋に大きな転換期が訪れたのが2012年の理事選。
理事に当選した春日山親方(春日富士)は部屋運営との両立が困難だと
雷親方に名跡を変更し協会の仕事に専念することにし、春日山部屋は一門で現役だった濱錦が引退して継承しました。理事選での票集め目的の初場所後駆け込み引退ではなかったので、部屋継承目的での引退だったと思われます。
丁髷姿での新師匠。長く幕下にいた濱錦が突然の部屋持ち。
少し違和感を感じた部屋継承でした。
春日富士退職と部屋移転
部屋継承から間もない2012年の秋頃、突然雷親方(春日富士)が退職します。
不倫女性との交際費(ホテル代など)を協会の経費で計上していたそうです。
一門内での利権関係など存在したのか定かではありませんが、会見や弁明もなく早々の退職でした。なんとなく内部リークの匂いもし、この問題には若干の闇を感じずには入られませんでした。そしてその退職から1年ほどが過ぎた頃、部屋の賃借について春日富士と濱錦の間で裁判が起こります。春日山部屋の施設は先代の親方である春日富士の所有物であって、その部屋を賃貸として使っていた濱錦が賃料を払っていなかったと。
結局部屋に関しては色々ともめた結果、2015年の秋に春日山部屋は川崎内で別の場所に移転します。
いつの世も揉める要素の年寄名跡問題
部屋の施設問題と同時に「春日山」の年寄名跡問題も勃発しておりました。
協会が年寄名跡を一括管理するために提出を求めていましたが、濱錦は提出していないことが判明。施設問題と共に表面化しました。
正直よくわからないのですが簡単にまとめると、実は元々春日富士の持っていた春日山の年寄名跡を濱錦は正式には譲り受けておらず(証書を持っていない)、その対価を払っていないということ。濱錦側は不当に春日富士が所持していると主張。春日富士側は、相応の金額を支払えと主張。
まさに角界の闇、年寄名跡問題。
濱錦の失脚
煩雑なので一旦整理すると、それぞれは別問題なわけです。
①施設使用に関しては春日富士と濱錦の問題。
②年寄名跡に関しては内輪&春日山親方(濱錦)と協会の問題。
施設の賃料に関しては協会ではなくあくまで個人間の問題であり、
年寄名跡は内輪の問題があり、かつ協会へ名跡の証明書を提出できていない問題もある。そんな年寄名跡の証書提出していない春日山親方に対し新たに、
「濱錦はそもそも稽古もしっかり見てないし親方の資質がない」
という問題が出てきました。
部屋を閉鎖するか新しい師匠に変わるか・・・。
散々もめた結果部屋は閉鎖され、所属力士たちは濱錦が現役時代に所属していた追手風部屋に一時預かりとなりました。
その際、部屋の閉鎖に反発した力士達が撤回を求めて会見をし、最終的に引退をするという悲しい出来事もありました。
突然現れる旭里
一時預かりになっていた元春日山部屋の力士達を引き受けたのが、一門の中川親方。部屋は新たに「中川部屋」としてスタートしました。
同期生として引き受けたそうです。
中川親方、元幕内旭里。所属は元旭国の大島部屋。
旭国の大島部屋といえば旭富士と旭道山。少し後に旭豊と旭鷲山に旭天鵬。
このイメージが強く、旭里の名前は平成初期からの相撲ファンでないと、なかなか上がらないはずです。個人的には旭里と旭豪山が、大島部屋の上がりきれないカテゴリーとして印象的です。
そんな旭里ですが「幸運と流れの中でうまく動いている印象」を持っています。
彼の引退は、理事選での票確保のため突然の引退でした(そうは言ってないですが)。実績からすれば角界には残れない状況でしたが、たまたま理事選のタイミングで空いている名跡があり、一門の票を確保するために白羽の矢が立ったのが旭里でした(引退する星ではないですが引退しました)。
その後は目立った話題もなく親方稼業を続けていましたが、突然の部屋継承。
気がつけば部屋持ちになっていた・・・そんな中川部屋の誕生でした。
そして中川部屋の暴力問題へ
旭里には暴力のイメージはなく、周りの意見で動きを振り回されている印象の方が強かったので、今回の報道は驚きです。今回の暴力とパワハラ問題。
細かい内容を知らないので何とも言えないですが、やはり相撲界含めたスポーツ界全般において、無理編に拳骨で育った世代がいる間は、完全に暴力ゼロにすることは難しいのかなとも思います。上層部の根っこが「気合いと根性」である限り、机上の空論であり続ける可能性は非常に高いわけで・・・。根気よく続けるしかないでしょう。
大昇の想いはどこに
コロナウィルスの影響で、無観客開催、場所や巡業の中止、ぶつかり稽古の禁止など様々な異常事態が続く中、今回の問題でまた環境が変わる力士が出てきます。通常の状態であっても、終わると体重が減ると言われるくらいに神経を使う本場所にも関わらず、本来ないはずの負荷をかけられる力士が改めて不幸です。
最近では稀勢の里のいた鳴戸部屋など、相撲部屋の継承においての「年寄名跡とお金の問題」は本当に揉めることが多いです。
春日富士の師匠だった大昇は、春日山名跡をほぼ無償で譲ったそうです。
調べるとそんな粋な親方も存在します。
年寄名跡は資産になるので、当然金銭での売買になるのは仕方ないと思います。
しかし、その裏で振り回される力士が必ず存在します。
貴乃花や稀勢の里につぐ16歳で幕下入りした吉井など、大事な時期に環境を振り回されるとは角界の将来にも関わってきます。
不運の一言で片づけてほしくない問題です。