まさに晴天の霹靂
GWも終盤に入ったタイミングで驚きのニュースが飛び込んで来ました。相撲ファンの中には、もはや夏場所どころじゃなくなっているという方も、いらっしゃるのではないでしょうか?
春場所で復活の十両優勝を飾り、幕内復帰を決めていた元関脇の逸ノ城が、5月14日の夏場所初日を間近に控えたタイミングで突然引退を表明しました。
晴天の霹靂とはまさにこのことです、、、
朝からネットニュースが先行したものの、5月4日に師匠の湊親方が相撲協会に引退届を提出し、協会からも現役引退が正式に発表されました。
これで逸ノ城の引退は正式な決定となったわけです。
気になる引退の理由としては、かねてから持病だった腰痛の深刻化を挙げており、 「腰の状態が手術してもよくならない。歩くのも横になるのもかなりつらい」とのことで、引退会見の 2日前に師匠の湊親方と話して決めたそうです。
たしかに逸ノ城の腰に関しては、これまで長く患っていた持病で度々休場の原因になったりなどはありましたが、昨年名古屋場所では悲願の初優勝も果たし、大器と騒がれた逸材の、遅まきながらの横綱昇進や大関昇進への期待も高まってきた矢先の出来事(優勝からわずか5場所)でした。
春場所の番付は十両に位置しておりましたが、この陥落は力が落ちての陥落ではなく、 新型コロナウィルスのガイドライン違反による出場停止が原因であり、むしろ春場所は、朝乃山への勝利をはじめ実力差を存分に見せつけての優勝を飾り、今場所は堂々の幕内復帰を決めたばかりでした。
まさに逸ノ城にとっても、長く逸ノ城を応援してきたファンにとっても、この1~2年が勝負の時ではないかというタイミング。。。。
2014年初場所、実業団横綱として幕下付け出しで大相撲デビュー。今も相撲ファンの記憶に鮮明に残る「新入幕優勝」へあと一歩と迫った、同年秋場所の快進撃。
逸ノ城の相撲人生は、相撲人気の復活と歩みを共にしてきました。
そんな、まだ先のあるはずだった逸ノ城の突然の引退には、様々な疑問や憶測が飛び交っています。
一体その真相はどこにあるのでしょうか?
いくつかの疑問
今回の突然の引退発表には「慢性的な腰痛」だけでないと、勘繰ってしまうことがいくつかあります。
まずは番付面です。
夏場所の逸ノ城の番付は西前頭13枚目。仮に今場所「腰痛」で全休をしたとしても、来場所は十両の下位には留まれるはずなので、少なくとも数か月間は給料がもらえる関取に留まることが出来ます(ちなみに幕内で月130万円、十両で月103万円)。
わざわざ急いで引退を決めるメリットをあまり感じません。
次に国籍の問題。
逸ノ城は2019年に日本へ帰化していますが、相撲協会に親方として残るためには「年寄名跡」を取得(襲名)する義務があり、取得条件の一つとして日本国籍である必要があります。
そのため、これまでも外国籍の力士で協会に残るつもりのある力士は、現役中に日本に帰化をしております。
特に逸ノ城の場合は帰化後の名前を「三浦 駿」とし、師匠の苗字を名乗っているので、将来的に部屋を継承する可能性も秘めていました。
借株の目途も付けずに早々に角界を去っていく不自然さを感じずにはいられません。。。
唐突な回答や会見
また、今回の引退会見も急遽開かれたような印象があり、逸ノ城の回答も「まだ決めていない」「今後考える」といったような、もう少し会見の準備をした方が良かったのではと思うような内容が多く見られました。
師弟の確執が発覚
そんな様々な背景の中言われているのが、昨年末くらいから表沙汰になった、師匠である湊親方との確執です。
今回の引退劇にも、この事件が絡んでいるという噂があります。
以前も書きましたが、逸ノ城の酒癖が悪く、湊部屋のおかみさんに暴力を振るい、湊親方との関係悪化が顕著になっており、師弟の会話が弁護士を通してのものになっているとのことでした。
この出来事が世の中に出た際は、湊部屋内における内輪の話と言うことで相撲協会は特に問題とせず、何となく「時が過ぎれば」的な雰囲気で終わらせましたが、実際にこの冷戦状態の関係が続いていた場合、今回最悪の結果を招いたてしまった可能性もあります。
引退会見の写真や映像をみる限り、師弟共々表情が曇っており、引退の寂しさだけではないような雰囲気さえ漂わせていました。
相撲部屋は師匠が絶対の存在です。
仮に師匠の現役時代の実績を上回ったとしても、師匠との関係悪化が続けば、部屋には居づらくなり立場も弱くなる・・・曙と高見山との関係を思いださずにいられません。
また、「音羽山」名跡の取得を巡り、師弟間で金銭面でのイザコザがあったという噂もありますが、真相はわかりません。
とにもかくにも、関係修復が不可能なところまで来ていた師弟の関係だったのかもしれません。
お酒が原因?
昨年、親方との確執やおかみさんへの暴力が取り上げられた際、逸ノ城のアルコールへの依存が問題になりましたが、今回の引退騒動に「アルコール」が関わっているのではないかという話も一部では出ているようです。
「お酒と引退」と言えば、かつて高砂部屋に所属していた「南海龍」を思い出すオールドファンもいると思います。
小錦の後輩として高砂部屋から初土俵を踏んだ「南海龍」。
「末は横綱大関」と将来を嘱望され幕内上位まで番付を上げたものの、無類の酒好きがたたり引退へと追い込まれてしまいました。
師匠から「酒と相撲どっちを取るか?」と聞かれて「酒は絶対にやめられない」と答えたのはあまりにも有名です。
今回の騒動に、この南海龍事件を重ねる方もいるようです。
逸ノ城疲れてしまったか?
さて、ここまで今回の逸ノ城引退について色々と書いてきましたが、私個人の結論(すでに結論ではないですが)としては、、、
逸ノ城が様々なことに対して、疲れてしまったのではないか?と思っています。
新入幕でフィーバーが起きた際、注目を浴び過ぎた影響で帯状疱疹になってしまうほど内気な青年だった逸ノ城。
年寄名跡を巡る問題や、親方をはじめとする部屋関係者などとのやり取り、不信感など、様々なことでストレスが重なり、お酒を飲んでトラブルになったところ、昨年末からの報道もあり相撲以外の部分でも注目され、肝心の師匠との関係性も修復できず。。。繊細な逸ノ城としては、「もういいや」と疲れてしまったのではないでしょうか?
ここ1ヶ月稽古場にも現れず、力士会も欠席、春巡業も休場。
張りつめていた糸が切れてしまったのかもしれません。
今回の件、師匠としては何とか出来なかったのでしょうか?
湊親方にも言い分があるでしょう。逸ノ城にも問題があったかもしれません。
しかし、仮に一部素行に問題があったとしても、そこを修正させるのが師匠の湊親方であり義務なのではないでしょうか?弟子を万全の状態で土俵に上げること、その環境を作るのが師匠の責任ではないでしょうか?
以前、春日野部屋を突然引退した栃乃若。あの時同様もっと早く対応出来なかったのでしょうか?
会見後、囲み取材を逸ノ城を置いてその場を去った湊親方でしたが、最後まで湊部屋設立以来の出世頭だった逸ノ城のそばにいてあげて欲しかったです。
水戸龍が残した「アイツは相撲を嫌いになることはないですよ」 という言葉に、何とも言えぬ切ない気持ちにさせられます。