大観衆の稀勢の里断髪式
2019年9月29日元横綱稀勢の里、現荒磯親方の断髪式行って参りました(未だに荒磯親方という実感がないですが)。
開場後に駅に着くタイミングで家を出たのですが、両国駅を出ると国技館前にビックリするほどの行列が・・・。
近寄ってみると当日券を求める人だけでなく、その多くはチケットを持った入場待ちの行列です。しかも既に開場している時刻にも関わらず…
これまでも断髪式には何度か来たことがありますが、改めて19年ぶりに誕生した日本人横綱(面倒なのでこう呼びます)の変わらぬ人気と、新たな旅立ちを見送りたいと思う沢山の人々の気持ちを痛いくらいに感じるエントランスの混雑ぶりでした。
相撲ファンの想いが一つに
当日は、鎬を削ったライバル白鵬、鶴竜、元日馬富士、弟弟子の高安などはもちろん約300名近くの支援者や関係者、力士達がハサミを入れましたが、お父さんがハサミを入れた瞬間の稀勢の里の涙にはお客さんからも大きな拍手が送られました。
個人的に一番良かったのが、横綱稀勢の里最後の土俵入り。
「稀勢の里!」と館内のあちこちからかかる声は、 まるで番狂わせの一番後に舞い翔んだ座布団のようで、今この場所で稀勢の里と対戦したら、どんな人気力士でもアウェイになってしまうほどの大歓声でした。
ここ数年、土俵外での出来事を興味本位や面白半分で 報道されたり見られたりする機会が多かった相撲界ですが、稀勢の里の土俵入りには、その全ての目を土俵に戻す力を感じました。
色褪せない横綱としての姿
横綱稀勢の里は、その在位期間の短さや休場数の多さを指摘する声も一部ではありますが、忘れてはいけないのが横綱に必要なものが「心技体」だということ。稀勢の里は何よりも「心」を持った横綱でした。
かつて土俵の鬼と恐れられた初代若ノ花から、脈々と続く鬼の教えの正当な継承者として、立派な土俵を勤めた横綱だったと思っています。
モンゴル力士達にたった一人で立ち向かった構図を周りは描きますが、 「彼らがいたから」と稀勢の里は彼らを認め、同時期に綱を張った3人の力士達もまた、稀勢の里の凄みを肌で感じているはずです。
本当にお疲れさまでした。
西岩親方のハサミの意味はなに?
稀勢の里が大関昇進する直前に急逝した、育ての親でもある元鳴戸親方がもしもまだご健在であれば、今日どんな言葉をかけたのでしょうか?
引退までの功績と努力を褒めたのか?はたまたここから先が大切と、改めての宿命を背負わせたのか?それが聞けなかったのは、多くのファンにとって唯一の心残りでしょう。
萩原少年が入門後付き人として付いた恩人西岩親方(元関脇若の里)。若の里は師匠に全てを教えるように申し付かり、稀勢の里が付き人についたそうです。
そんな西岩親方、 今回ハサミを入れる前に稀勢の里に何かを話かけていましたが、入れたハサミの回数はなぜか2回。
1回は兄弟子として。もう1回ははたしてどんな意味があったのでしょうか?
今書いていても胸が熱くなります。
荒磯親方の第二の人生が始まります。そして鬼の血もこれからも続きます。