豊ノ島引退
残念というよりも豊ノ島の場合は寂しいという表現の方がしっくりきます。
前回の陥落時とは異なり九州場所を皆勤しての幕下陥落、そして負け越しでしたのである程度予想はしていたものの、現実になるとやはり寂しいです。
寂しく思いつつも今回の引退で改めて昔の映像や写真を見返し、若手時代からの(スマート)変貌ぶりに最後まで笑いを提供してくれると、一人思っています。
そんな事で今回は勝手に豊ノ島を振り返ってみたいと思います。
幕内で長く活躍した力士生活
2004年の新入幕から長きに渡って幕内の土俵で活躍した豊ノ島。
通算703勝
幕内在位71場所、三役13場所
殊勲賞・敢闘賞各3回、技能賞4回
金星4個
優勝同点1回
記録的にも立派な数字が並んでいます。
しかし何より豊ノ島が長く活躍した証は、新規で相撲部屋を開設できる条件をクリアしていることだと思います。例えば相撲部屋の親方になる場合、現在ある部屋を継承するケースにあたっての条件はやや甘目です(年寄襲名よりも)。しかし新規の部屋を新たに開設となるとかなり厳しい条件になってきます。
横綱か大関経験者、三役を通算25場所以上、幕内通算60場所以上
この3条件のうち一つをクリアしなければいけません。
ちなみに現役で横綱大関経験者以外での該当を調べてみたら・・・
栃煌山と玉鷲のみ(玉鷲は帰化すれば)。
たった二人かい！と言われてしまいそうですが、60場所といえば単純計算で10年間幕内で相撲を取り続ける必要があり、決してハードルは低くありません。
稀代のエンターテイナー
ジャンクスポーツを始めとしたメディアをきっかけとして豊ノ島を知った人や相撲に興味を持った人も多くいるのではないでしょうか？豊ノ島が相撲への入り口になったと。
芸達者でもあり、モノマネのレパートリーであるビートたけしや平泉成、いっこく堂にいたってはプロ級です。巡業地に行っても進んでファンを意識した行動をとっており、記念撮影やサインにも応じ屋台を手伝うような事もしていました。
角界きってのエンターテイナーとして、相撲人気が低迷している時は人気復活に向けて頑張り、人気が復活した後はさらに盛り上がるよう長く相撲界の現役広報部の務めを果たし、ファン層の拡大に大いに貢献したと思います。
ライバルたち
豊ノ島が初土俵を踏んだのは2002年の春場所。
貴乃花時代が終焉に向かい、次の時代は恐らく朝青龍が担うだろうという雰囲気はあったものの、さらにその次の世代を意識させるほど豊ノ島が初土俵を踏んだ頃の新弟子は有望な顔ぶれが揃っていました。
2001年 初場所-日馬富士、春場所-白鵬、九州場所-鶴竜
2002年 春場所-稀勢の里・琴奨菊、九州場所-琴欧洲
特に高校相撲で鳴らした菊次と梶原は入門当時から注目され、期待通りの出世争いを演じていました。琴奨菊ともう一回やりたかった、というコメントがあったように最後まで良きライバルだったのですね。入門時は梶原の方が分が良かったことが懐かしい。
小さな体で奮闘
相撲界の入門資格が現在の「167センチ、67キロ以上」になる前、基準はもう少し厳しく「173センチ、75キロ」でした。しかし当時入門者が減少し始めていたので裾野を広げるため、若干体格が足りない志願者であっても第二次試験にパスすれば入門できる制度がありました(基礎体力テストのようなもの)。2001年以降に始まったこの制度で初めて関取になったのが豊ノ島。ベテランの域に差し掛かるにつれてあれよあれよとアンコ型になった豊ノ島でしたが、身長に関しては小兵でありハンデを背負っていたと言えます。 この後第二次検査で関取まで昇進した力士も数名いましたがそれほど結果を残せていません。豊ノ島が長く幕内で活躍したことは技術とセンス、努力の結果なのでしょう。よく祖父も豊ノ島は相撲が上手いと言っています。
家族愛
あくまでメディアでの情報のみの勝手なイメージになりますが、家族愛をいつも感じます。以前からテレビによく家族と出演することが多い豊ノ島ですが、家族カラオケで盛り上がる姿や、料理を作る場面、奥さんがツッコむところなど微笑ましいシーンはもちろん。幕下生活の頃の家庭での話や、引退を決意した気持ちを再び土俵に向かわせた絆。関取の奥さんが必要以上に前に出て来るケースもありますが、沙帆夫人の絶妙なアシストは見事に豊ノ島を立てています。
いつも笑顔と笑い声に囲まれていた豊ノ島でしたが、現役最後の土俵は無観客での本場所になってしまい、記者を集めての引退会見も行いませんでした。コロナの影響とはいえ、何だか寂しい引き際だと思っていたら沙帆夫人のコメント。「最後の場所は無観客でしたから、引退相撲の時は多くの人に『豊ノ島～』って声をかけていただきたいですね」
最後までカッコいいぜ。
断髪式は2021年2月くらいでしょうか？？
