貴源治と貴ノ富士-時代が望まなかった双子力士-

既にご存じのことですが、名古屋場所中の今月17日に貴源治が大麻を使用しているとの情報が相撲協会に入り、場所後の19日に尿検査を受けたところ大麻陽性判定になったそうです。この結果に対して、貴源治本人も宿舎近くで大麻たばこを1本吸ったことを認めているそうなので、今後厳しい処分が科せられるのは間違いないと思われます。名古屋場所も千秋楽が終わり、あとは新横綱誕生を待つばかりのタイミングでのニュース。思わずニュース記事を二度見してしまいました。

案の定翌日には一部ワイドショーで取り上げられ、素行の悪さを報じられていた貴源治。たしかに今回の件は相撲ファンにとって正直青天の霹靂ほどの衝撃はありませんでしたが、貴源治の悪い部分ばかりが報道されているので、今回は一人でも多くの人にちゃんと貴源治について知ってもらいたいと思い書かせて頂きました。

 

貴源治の素質と将来性

中学校時代はあの八村選手に同じ高校に行こうと誘われたほどの身体能力を持つ、 県内でも有名なバスケット選手でした。しかしバスケの道には進まずに相撲界に入門。未経験ながら入門から1年半ほどで、かつて学生横綱だった正代に土をつけるなど早くからそのポテンシャルは注目されていました。

入門から2年、17歳で幕下昇進。
平成29年夏場所19歳で新十両昇進。

190センチを超える上背と懐の深さなど恵まれた体系に、突いても組んでも取れる取り口。その将来性は抜群で新十両昇進もあくまで通過点という印象で、当時の解説や関連記事では「横綱・大関」といった言葉を使っている物も多く、貴源治の将来は前途洋々に見えました。

 

貴源治の土俵態度

今回の事件を受けてその素行だけでなく、これまでの相撲人生まで否定するかのように報道されている貴源治。しかし一方で他の力士と同じく、いやそれ以上に努力をして来たからこそ、関取として土俵に上がり続けていることも忘れてはいけません。たしかに恵まれた体系を持ち、豊かな素質があったのかもしれませんが、未経験で入門した少年が素質だけで関取に上がれるほど甘い世界ではありません。早朝から稽古土俵に立ち、1時間ぶっ通しでぶつかり稽古を行ったという話もしており、新十両の稽古総見でも幕内の稽古中も一人残って体を動かし、巡業でも積極的に稽古をしていた姿が印象に残ります。彼もまた土俵の鬼のDNAを継いだ力士の一人でした。
同じように相撲に打ち込んでいた兄貴公俊と共に、この双子力士に当時大きな期待をせずにいられなかったことを今も鮮明に覚えています。

貴源治伸び悩み

新十両インタビューで「ここまでの5年間は濃かった」と語った貴源治でしたが、十両定着をした辺りからの約2年ほどはそれ以上に様々なことがありました。日馬富士の貴ノ岩への暴行事件・貴公俊の付き人暴行・貴乃花部屋閉鎖並びに師匠交代・貴ノ岩引退。そんな中、兄弟同時優勝で新入幕を果たし、いよいよこれからと言う矢先の兄貴ノ富士による再度の暴行事件と引退(自身も付け人へのパワハラで処分)。まさに嵐の2年間。
沢山の物を失った貴源治でしたが、気のせいかその後は以前の輝きが失われたように見え「取り口が雑」「覇気がない」などと言われる場面もありました。

貴源治低迷の原因

入幕経験も有りまだ24歳。決して老け込む年齢ではありませんが、ここ数年の貴源治はたしかに低迷していたように思えます。
私が思う(勝手に)貴源治低迷の原因は2つあると思っています。

1つはやはり人気先行になってしまったこと。
師匠が無名な関取もいない小さな部屋であれば、自身の活躍でしか注目を集めることは出来ません。しかし貴源治には「双子関取を目指す」という物珍しさや、当時の貴乃花部屋には初対戦で白鵬を破った貴ノ岩や、新進気鋭の貴景勝がおり、何より「貴乃花」という看板がありました。事実はわかりませんが、出世も早く前途洋々な相撲人生を予想された貴源治の周りには多くの人が集まり、マイナスの影響を与えた人もいたはずです。

そして2つ目が環境の変化。
稽古時間や指導法の変化などはもちろんですが、十両から幕内にかけて押し切れずに四つに組む相撲が多くなってきた貴源治にとって、貴乃花親方退職や貴ノ岩引退は大きかったのではないでしょうか?関取も多く稽古相手がいるとはいえ、貴景勝や隆の勝、貴健斗といった部屋の関取衆は突き押し、千賀ノ浦親方は押し相撲です。四つ相撲が完成する前に一人にされてしまったような気がしてなりません。そして、素行に関しても色々と言われますが厳しかった先代がいなくなり、兄弟子で関取だった貴ノ岩も引退。大関とは言え貴景勝は後輩、親方も優しい。脇道に逸れそうな時に助言してくれる人がいなかったのかもしれません。そう言った意味でも、あの貴乃花部屋閉鎖の犠牲者だったのかもしれません。

  

時代が翻弄した

貴源治を見てきた中でこれまでずっと思っていたのが、カッコよく言うと「生まれる時代が遅すぎた」ということです。
これまでパワハラと言われた貴源治の行動を振り返ってみると以下の通りです。

「2019年9月、当時所属していた千賀ノ浦部屋の新弟子4人へ暴言を吐き、理不尽な要求をしていました。掃除などの仕事を疎かになっている、あいさつの仕方が悪いなどと、たびたび新弟子にブチ切れ。『腕立て伏せ、罰金、外出禁止のどれかを選べ!』と、叱りつけていたそうです。 粗相があると連帯責任。4人全員へ腕立て伏せ50回2セットを強要し、部屋の別の力士に録画させ、自身のスマートフォンへ送るよう命じていました」(相撲協会関係者) 19年7月場所中には、とんでもないハラスメント行為をしている。 「新弟子の一人を、『言いつけをスグ忘れる』と叱責します。さらに他の力士がいる前で片手を頭の上にあげるポーズをさせ、こう言うよう命じました。『自分は頭が悪いです』と。

若干お子様な感じの内容も入っていますが、要は「新弟子の挨拶や仕事ぶりが悪いので強めに叱って罰を与えた」というもの。
現代においてはこれを「パワハラ」というのかもしれませんが、恐らく親方衆の現役時代にはこんなことは日常茶飯事で、むしろ可愛いくらいの内容だったと思います。貴源治や貴公俊は自身が厳しい環境の中で新弟子時代を過ごしたので、それを伝えたい部分もあったのでしょう。
ビックマウスと言われましたが、最近ではあまり見なくなった負けん気の強さや、それを表に出す姿勢。しかしそれは、下の力士からすれば煙たい存在だった部分もあるのかもしれません。もう少し違った表現方法が出来ればと思うと残念です。

大麻使用という行為は許されません。
しかし貴源治が歩んだ相撲道すべてを否定するつもりもありません。
ただ大きな未来を期待された力士の相撲道が、ここで終わってしまうだろうことが残念でなりません。

最後に新十両目前のインタビューでの貴源治の言葉を紹介したいと思います。

「昔の藤島旋風はすごかったと聞いている。早く強くなって下の者も引き上げて、自分たちもこの部屋を盛り上げたい」

  

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