強豪関脇ポパイ二世若の里
今回は私の相撲関連の書籍の中から1冊をご紹介させて頂きます。
今回ご紹介するのは、19場所連続三役在位という記録を持ち、大関まであと一歩と迫った名関脇若の里改め西岩親方の一冊。
「たたき上げ」 西岩親方(元関脇若の里)
現役時代を知っている相撲ファンにとっては、長く大関候補として幕内上位に君臨した実力者であり、最近の相撲ファンであれば、稀勢の里の兄弟子と表現した方がわかりやすいかもしれません。
師匠隆の里の現役時代を思い起こさせるかのような、筋トレで鍛えあげたその体からポパイ二世とも呼ばれ、初代若ノ花から脈々と伝わる「鬼の教え」を平成の世に引き継ぎ、猛稽古と恐れられたあの鳴戸部屋を正に体現したかのような昭和の匂いのする(しかしないかもしれない)お相撲さんです。
残念ながら前述したように大関にはあとわずか届きませんでしたが、その全盛期は、「関脇は横綱のように番付が落ちない地位だったのか?」 と錯覚するほど、毎場所番付の関脇欄には若の里の名前が当たり前のように記載されておりました。
第二の若隆コンビとして
若の里こと古川少年は中学卒業後、青森から上京して平成4年春場所に鳴戸部屋から初土俵を踏みました。
この平成4年春場所は当時の若貴ブームにも乗り、史上最多160名もの新弟子が入門をした場所になりましたが、鳴戸部屋からも8名の同期が初土俵を踏み、その中にはのちの関脇隆乃若や幕内隆の鶴(現田子ノ浦親方)もおり、特に隆乃若とは二代目若ノ花と師匠隆の里の関係に例えられて、相撲雑誌では第二の若隆などと早くから注目されていました。
その後出世争いは若の里が一歩先を走りましたが、怪我もあり三役はほぼ同じタイミングで昇進、惜しくも大関には届きませんでしたが共に最高位は関脇で、今も交友関係は続いているようです。
鬼の教えての何たるかを知る
この本を読むことで、力士若の里の土俵人生を知ることが出来きるのですが、何と言っても「鳴戸部屋の厳しさ」や「師匠の存在」を改めて知ることが出来ます(笑)
猛稽古と雑用に明け暮れる毎日を送った新弟子時代の若の里。どの部屋も新弟子時代は雑用が多く大変ではありますが、鳴戸部屋は噂通りに厳しい部屋だったようで、相撲界に昼寝があることを他の部屋の力士に聞いて初めて知ったくらいだったそうです。
日常生活においても厳しかった鳴戸親方のことも勿論書かれており、若の里という力士に鳴戸部屋の全てが叩き込まれ、鬼の教えを継承しているということも感じることができます。
その証拠に、鳴戸親方は稀勢の里が入門した際、若の里に色々と指導することを命じたそうで、若の里を通して稀勢の里は相撲界のイロハや鬼の教えを継承していきました。稀勢の里が醸し出す命をかけた必死の土俵姿や、ひたむきさに打ち込む原点は、この若の里にあり、今も稀勢の里が直立不動になるほど若の里を尊敬しているのにも納得します。
引退後はインスタで楽しそうな姿を見せている若の里、現役を退いて肩の荷が下りたのでしょう。今後は後進の指導を行いながら、鬼の教えを伝承していって下さい。
今の相撲にも脈々と流れる初代若乃花鬼の教えを知る為にも、ぜひ一度読んで欲しい一冊です。
たたき上げ
目次
第1章:相撲との出会い、そして旅立ち
第2章:稽古漬けの青春
第3章:大関取りへの道は険しく
第4章:引退の花道に、こらえきれず涙
第5章:たたき上げの誇り