鶴竜は井筒親方になれるのか?井筒部屋の継承者は?

晴天の霹靂志摩ノ海婚約

幕内志摩ノ海(木瀬)が、故先代・井筒親方(元関脇・逆鉾)の長女・福薗清香さんと婚約したことを発表。墨田区の木瀬部屋で会見し、志摩ノ海は「身が引き締まる思いで、相撲に精進できると思う。頑張りたいなと言う気持ちがさらに持てました。明るく共に成長していく家庭を築きたいです」と決意を込めた。

先日このようなニュースが発表されました。志摩ノ海と故井筒親方の娘さん。もしかすると私が知らないだけで繋がりがあるのかもしれませんが、木瀬部屋と井筒部屋、逆鉾と肥後ノ海といった組み合わせは一門も異なり、現役時代においても全く接点を見つけることが出来ないため、非常に不思議な感じのする今回の組み合わせ(婚約)でした。

そして同時にこの婚約は衝撃的な発表でもありました。今回の件、婚約だけの問題であれば「めでたい!」の一言で終了になるのですが、そこには鶴竜や豊ノ島の今後、「井筒部屋再興」問題が絡み合ってきます。

今回はこの志摩ノ海婚約によって起こりうる可能性を掘っていきたいと思います。

井筒部屋の再興にむけて

まずは今回問題になっている「井筒部屋」のこれまでの流れを説明します。

令和元年に元関脇逆鉾の井筒親方が急逝し閉鎖された井筒部屋は、逆鉾や錣山親方の父である元関脇鶴ヶ嶺によって創設されました。先日昭和48年より使用されていた部屋の建物が取り壊されましたが、鶴ヶ嶺はこの場所で創設時より大関霧島や逆鉾、寺尾など多くの関取を輩出してきたのです。

 

井筒部屋

平成6年に鶴ヶ嶺が定年を迎えると実子である逆鉾が部屋を継承し、井筒部屋最高傑作である第71代横綱鶴竜を育てました。

令和元年9月、鶴竜最後の優勝を見届けた逆鉾が急逝すると部屋は閉鎖。鶴竜以下の力士達は一門内の井筒部屋に移籍。井筒部屋は長い歴史に幕を閉じました。

令和3年鶴竜引退に際して井筒名跡の行方が注目されましたが、鶴竜は鶴竜親方のまま陸奥部屋付の親方として協会に残り、老朽化の取り壊されている旧井筒部屋の場所に新たにに相撲部屋が建設され、いずれは鶴竜が井筒部屋を継承するのだろうと、多くの人がそう思っていました。

志摩ノ海が井筒親方に?

そんな中で発表されたのが今回の”志摩ノ海の婚約発表”。これがどう繋がってくるのか?

現在「井筒親方」の親方株を所有しているのは元逆鉾の奥さん。今回志摩ノ海がその長女と結婚したことで、志摩ノ海は逆鉾の義理の息子になったということになります。

つまり血縁関係においてだけで言えば、「井筒親方」の親方株に今最も近いのが志摩ノ海ということになってきます。もしも志摩ノ海が年寄井筒の正式な継承者になった場合、志摩ノ海が引退した後には井筒親方を名乗るため、5年後に鶴竜親方の任期が終了する鶴竜は、井筒部屋の再興どころか井筒襲名すら出来なくなってしまいます。また、2026年の3月時点で36歳になっている志摩ノ海が現役を継続していたとしても、自身の親方株でなければ部屋の運営をすることは不可能です。

志摩ノ海は井筒親方になれない

ここまでを読んで頂くと、志摩ノ海が井筒親方を名乗る可能性が高いように思えるかもしれませんが、現時点で志摩ノ海は、井筒親方はおろか親方になる資格を持っていません。なぜならば、親方襲名の条件を満たしていないからです。

親方株を襲名する条件は「日本国籍を有する者」に加え、下記3条件のどれか一つを満たす必要があるのですが、志摩ノ海は現時点で幕内15場所、十両8場所の経験しかないため満たしておりません。最速でも来年秋場所まで幕内を連続で勤めるか、もしくは十両以上で来年の初場所まで相撲を取り続けなければなりません。緩和条件もあるのですが、その条件を満たす為にもやはり約1年間は必要になってきます。

1.最高位が小結以上
2.幕内通算在位20場所以上
3.十両以上での通算在位30場所以上
※通算28場所でも、条件次第での例外あり

 

井筒部屋再興は成るか

前述で紹介した親方株の襲名条件ですが、実は現在ある相撲部屋を継承する場合に限っての別条件が存在します。こちらはグンとハードルが下がり、 「幕内在位通算12場所以上」か「十両以上での在位を通算20場所以上」のどちらかをクリアすれば親方を名乗ることが出来るようになるのです。

現在の志摩ノ海は両条件を既にクリアしているので、「志摩ノ海の井筒親方が井筒部屋を再興してもいいのでは?」と考える人も中にはいるでしょうが、実はこれも結論から言うと「条件を満たしていない」ため現時点では不可能です。

継承するのであれば良いと書いたではないか?と言われそうですが、今回の井筒部屋のケースは既に一度閉鎖になっているので、「継承」ではなく「新設」に該当するのです。そして「新設」にあたっての条件は下記のどれかをクリアせねばならず、これまで挙げてきた条件の中で最もハードルが高いものになります。

横綱もしくは大関経験者
三役(関脇・小結)通算25場所以上
幕内通算60場所以上(番付制限なし)

大変失礼ではありますが、どれかの条件を現状の志摩ノ海がクリアすることは難しいと考えられるため、「志摩ノ海による井筒部屋の再興」というのは非常に可能性が低く、「既存の部屋を継承して井筒部屋に改名する」という方法が現時点で考えられる最も可能性の高い「井筒部屋再興」の方法になります。

鶴竜の井筒部屋再興への悲願

様々な可能性を書いてきましたが、井筒部屋や鶴竜の関係者からすればやはり、「鶴竜が井筒親方を襲名して井筒部屋を再興する」というのが、最も綺麗で分かりやすい姿だと思っているはずです。相撲ファンの多くも、井筒部屋の最高作品がその技術を伝承していくことを願っているはずです。

勘違いして欲しくないのが、私は志摩ノ海関の婚約や今後の井筒襲名可能性に対して文句があるわけではありません。今回の婚約において起こるべき可能性を挙げているのです。

ということで、ここからは鶴竜が井筒親方として残るための方法を考えてみたいと思います。

今回のケースではそのまま「井筒」を取得することは難しそうなので、別の名跡を取得するところから考えてみましょう(少なくとも最低5年以内に取得できなければ、そもそも相撲協会に残ることが出来ませんので)。所得後その名跡を井筒と交換することで、晴れて井筒親方として井筒部屋を再興することが出来ます。

現在、時津風一門内で空きそうな名跡を見渡すとすぐに空きそうな名跡はないのですが、立田山親方が来年の6月に定年を迎えます。もし立田山親方が再雇用制度を利用せずにそのまま退職すると、同じ時津風一門の名跡が一つ空きますので、旧井筒部屋設立初期からの力士であった立田山親方の元薩洲洋が持つ親方株が鶴竜に回る可能性もあるかもしれません。 そうなれば、井筒名跡と交換という形をとり、悲願の井筒部屋再興をすることが可能になります。

もしくは2024年に定年を迎える陸奥親方から部屋を継承するケースです。2024年であれば鶴竜親方として在籍出来る期間内になるのでこちらも可能です。その後は同じように名跡交換を行い、井筒部屋を再興することが出来ます。ただしその場合は霧島がも協会に残らずに退職ということになります。

ちなみにどちらのケースも再雇用制度を利用した場合は、鶴竜親方を名乗れる期間を過ぎてしまうのでパターンとしてはなくなります。

今後も注目の井筒部屋後継者問題

現在の井筒部屋跡地は新たな建物が建設中ですが、建設当初建築計画のボードに「共同住宅(相撲部屋付)」と記載さてていた用途から「相撲部屋付」の部分が削れらました。どういった意味が込められているのでしょうか?

まだまだ情報が不透明で分からない井筒部屋継承問題。今後も注目していきたいと思います。

角界に何か不祥事が起こり、意外な退職や名跡の空きが出来ないかぎり、すぐに大きく情勢が変わることは起こらなそうですが、豊ノ島も気が気でないでしょうね。

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