宮城野部屋で暴力事件発覚
春場所の番付発表を間近に控えたタイミングで相撲界に衝撃が走りました。
元幕内北青鵬が、1年以上にわたって後輩力士2人に対して日常的に暴力を加えていたことが判明しました。加えて今回の件は暴力だけでなく、窃盗や金銭トラブルもあったようで、周囲からの注意に対しても改善することはなかったとのことでした・・・。
元北青鵬に関しては、初場所中からSNS上で「暴力事件」や「金銭トラブル」に纏わる話が拡散されており、平静を装う関係者の方の言動から逆に「真実味」を感じていたのですが、結果的に想像以上に大きな出来事になりました。
相撲協会のコンプライアンス委員会は「懲戒解雇処分も検討すべき事案」としましたが、まだ22歳という年齢を考慮し「引退勧告の懲戒処分が相当」と答申、北青鵬は2月22日に引退届を提出して引退することとなりました。
一方師匠の宮城野親方こと白鵬に対しては、北青鵬の弟弟子2人に対する暴力行為を防げず監督責任を果たせなかったということで、「委員」から「年寄」への2階級降格と、報酬減額20%を3か月という懲戒処分が下されることと決定しました。
これだけでも結構な衝撃度なのですが、更に今回の処分はこれだけに留まらず、宮城野部屋は、今回の春場所所属する伊勢ヶ浜一門内から選ばれた別の親方が、現在の師匠代行を務めることも併せて決定しました。
今回の一件に関しては、相撲に興味のない人でも知っている知名度と実績を誇る白鵬の部屋で起きた事件だったこともあり、マスコミも「ここぞ!」とばかりに積極的に報じています。
「今回の処分が妥当なのか?不当なのか?」
私も色々思うことがあるので、今回はその辺りを書いていきたいと思います
北青鵬への処分は厳し過ぎる?
まず当事者の北青龍への処分ですが、これは妥当だと思います。
今回の話が噂レベルで出始めた頃は、まだ擁護する意見もチラホラあったように思うのですが、暴力を始めとする行為が徐々に明るみになるにつれ、世間の空気も「仕方ない」という雰囲気に変わってきたように感じます。
(暴力内容)
顔面への平手打ち、突き飛ばし等の複数回に渡る暴行・ほうきの柄などで臀部を打つ・財布に瞬間接着剤を塗布して損傷させる(伯桜鵬が送った財布らしいです)・右手指に瞬間接着剤を付ける・殺虫剤スプレーに点火してバーナー状にして炎を体へ近づけるなど、、、
そもそも内容が酷いというか幼いと言うか・・・
今回は「引退させられた」わけではなく「引退を勧告されたので自分から引退した」という形になるので解雇と異なり退職金も出るはずです
「まあ温情あるな」というのが個人的な意見です。
貴ノ岩や貴公俊のことを思い出しますが、貴ノ岩引退の際はたしか引退勧告された形ではなく自から責任を取って引退をしており、 相撲協会の対応として今回と同じなのは、貴公俊のケースが似ているのではないかと記憶しています。※あの時は本人が引退を拒否して揉めましたが。
序の口~幕下へ駆け上がっていた頃、「もっと強い力士と取れる」と嬉しそうにインタビューに答える姿とそのスケールから、途方もない力士への期待が膨らみましたが、その後相撲ぶりが変わらなかった所などを見ると、驚異的なスピード出世と注目度が逆に成長を止めてしまったのかもしれません。
非常に勿体ない力士でした。
白鵬への処分は妥当なのか?
次に白鵬への処分についてです。
監督責任を果たせなかったという理由により、「委員」から「年寄」への2階級降格と、併せて報酬減額20%×3か月という「懲戒処分」となった師匠白鵬の処分は妥当なのでしょうか?
一部「白鵬に対しての処分が厳しい」という声もありますが、個人的には白鵬本人に対しての処分(前述した内容)としては、特に厳し過ぎるとは思っていません。
一昨年伊勢ヶ濱部屋で暴力事件が起きた際は、伊勢ヶ濱親方が同じように「報酬減額20%×3か月 」と「理事→役員待遇へと2階級降格」となっています。
陸奥部屋の暴力事件においては親方の降格はなかったですが、まあ曖昧な査定が多い相撲協会の評価になるので、そこを範囲内と考えれば、今回の白鵬に対しての処分が、これまでに比べて明らかに重過ぎるといったほどではないと思っています。
実際弟子からの訴えがあったにも関わらず、問題を改善出来なかったのは「部屋の長」である宮城野親方なので、これは仕方ない処分に思えます。
宮城野部屋への処分は厳しいの?
今回の一連の騒動における関係者への処分において、私が個人的に重すぎると感じているのが「宮城野部屋」への処分です。
3月から始まる春場所では、宮城野部屋が所属する伊勢ヶ浜一門内から選ばれた別の親方が、現在の宮城野部屋の師匠代行を務めることも決まったそうなのですが、4月以降も同一門で宮城野部屋を預かることになっているようなのです。
この決定の背景を考えると、白鵬が相撲部屋の師匠として適任ではないので、他の親方を立てる。協会がそういったメッセージを発していることになります・・。
現役時代の3度にわたる処分歴も含めて、 コンプライアンス委員会では「相撲協会から排除すべき」という意見も上がったと報じられていますが、「白鵬憎し」に似たような雰囲気を感じてしまうのは私だけでしょうか?
たしかに監督責任があることは明白ではあるものの、ちょっと重過ぎるような気もします。
そして何より部屋の行く末が不透明な状態で相撲を取らされる宮城野の力士達が気の毒です。
「白鵬の弟子になりたい」と思い宮城野部屋に集った力士も大勢いる中で、「力士ファースト」を考えて欲しいと思うのは私だけでしょうか?
相撲博物館において、知り合いと思われる人たちに展示物の説明をする宮城野親方を見かけました。かつての横綱栃木山の強さについて、エピソードを紹介する内容でしたが、本当に良く相撲の勉強をしているなと感じました。
ここ最近は、横綱経験者が相撲協会を去ることが増えてしまったため、その技術や精神力、経験を伝える場面が減って来てしまっています。
必要以上に追い込むようなことは出来れば避けてもらいたいです。
木瀬部屋の復活を思い出す
今回の処分内容から「部屋の消滅」を心配されている方もいる一方、かつて「部屋の閉鎖→2年あまりで復活」を遂げた部屋がありましたので、それほど心配する必要はないのかもしれません。
現在の木瀬部屋の話になるのですが、木瀬親方(肥後ノ海)が2009年名古屋場所において暴力団関係者に維持員席の確保に関与したとされ、「委員→年寄へ2階級降格」に加え、所属力士達が出羽海一門預かりとされました。
2010年5月に木瀬部屋は正式に閉鎖され、北の湖部屋と合併したのですが、わずか2年後の2012年4月には木瀬部屋は復活し、現在に至っています。
相撲協会が「部屋を守りたいが世間体を考えた時に仕方ない」と考えているのであれば「忘れた頃に・・・」と出来るのですが、あの時と異なるのが師匠の注目度と、相撲人気が当時よりもあるということ。
稀勢の里の二所ノ関部屋が順調に大きくなり、鶴竜もいよいよ部屋が始動しました。
同世代を戦った親方達の切磋琢磨がいよいよ本格化する中、将来も見据えた処分や指導をして頂ければ幸いです。