優勝決定戦はいつから行われている?
先日行われた春場所において、12勝3敗で見事初優勝を果たした霧馬山でしたが、14日目終了時点では、星1つ差でトップの座は大栄翔が走っておりました。
大栄翔:12勝2敗
霧馬山:11勝3敗
しかし、千秋楽での本割(結び)・優勝決定戦と、霧馬山が大栄翔を連覇して、見事逆転での初優勝を飾ることとなったわけです。
各力士達の成績が決定するだけでなく、各段優勝や昇進・陥落の見込み、引退の噂なども流れてくるので、大相撲の本場所は後半の日程になればなるほどに熱気を帯びた雰囲気になってきます。
そんな中、幕内最高成績を収めた者同士が、 結びの一番終了後に改めて取り組む「優勝決定戦」は、いやが上にも本場所一番の盛り上がりを見せる一戦になります。
そんなわけで、今回は15日間の盛り上がりが詰め込まれた「優勝決定戦」について色々と書かせて頂きたいと思います。
※今回は「2力士による優勝決定戦」をテーマにしますので、3人や5人による巴戦に関して詳しく知りたい方は下記記事をご覧ください。
ちなみにこの「優勝決定戦」ですが、正式に制度として導入されたのが、1947年(昭和22)となっており、それ以前は「番付上位者が優勝」というルールになっていました。
そのため、優勝力士と相星にも関わらず、直接対決なくして優勝を譲らざるを得ないケースも過去にはあり、涙を飲んだ力士達も存在しました。
以前であれば、霧馬山は決定戦なくすんなりと優勝が決まっており、ちょうど一年前の春場所優勝決定においても、若隆景の土俵際での大逆転はなかったわけですね(東関脇若隆景VS前頭7枚目高安なので若隆景が優勝)。
平成の優勝決定戦
平成最初の優勝決定戦
それではここからは、本格的に「優勝決定戦」にスポットを当てていきたいと思います。
ただし制度化されてから、、、となりますと、あまりピンと来ない四股名のオンパレードになってしまいますので、「平成の優勝決定戦」ということで、時代を限定して見ていきたいと思います。
平成以降に行われた「優勝決定戦」は全部で43回あるのですが、最初に行われた優勝決定戦は、平成元年初場所(平成に入った最初の場所)でした。
初日前日に昭和天皇が崩御したことにより、初日が1日遅れ、異例の月曜日が初日となったこの場所。
3場所連続休場明けの横綱北勝海が初日から14連勝。このまま全勝かと思われた千秋楽に大関旭富士が土を付けて、平成初の優勝決定戦へ突入します。
14勝1敗同士の優勝決定戦では、今度は北勝海が本割での雪辱を晴らして4度目の優勝を果たしました。元号が平成となって初めて行われたこの場所、千代の富士の連覇は「4」で止まったものの、北勝海の優勝によって九重部屋の連覇は「5」となり、その後の「九重9連覇」に繋がることになります。
今から30年以上も前のことになると思うと、まさに光陰矢の如しですね。。。
もう少し「印象に残る優勝決定戦」を紹介していきたいと思います。
夢の横綱決戦
平成の優勝決定戦といえば、この対戦なしには語れないはず。
平成元年名古屋場所、横綱千代の富士と横綱北勝海による、、、
「同部屋横綱優勝決定戦」です。
場所前に幼くして三女を亡くし、悲壮感漂わせながら本場所の土俵に立つ千代の富士と、かたや前場所の覇者、6度目の優勝を狙う北勝海。
14日目終了時点で千代の富士がトップを走っていたものの、千秋楽に敗れて同部屋対決の実現へ・・・相撲ファンの盛り上がりは最高潮を迎えます。
優勝決定戦では、先輩横綱千代の富士が貫録を見せ、2場所ぶり28度目の優勝を飾りました。これで前年から続く九重部屋の連覇記録は脅威の「8」に。
夢の兄弟決戦
「千代の富士VS北勝海」の同部屋横綱決戦に勝るとも劣らない、優勝決定戦でしか実現しなかったもう一つの夢決戦と言えばこちらでしょう。
平成7年九州場所「横綱貴乃花VS大関若乃花」の兄弟決戦。
若貴フィーバーで相撲人気が盛り上がる中、相撲ファン達がずっと願ってきた対戦が実現した取組です。
この年の初場所に新横綱となって以来毎場所優勝に絡んでいた貴乃花に対し、なかなか優勝のチャンスがなかった若乃花ですが、この場所は好調で、貴乃花と共に優勝争いに加わります。
兄弟決戦への期待が高まる中、共に12勝2敗で迎えた千秋楽。
展開として最も可能性が低いだろうと思われた、「共に敗れる」というまさかの結末で兄弟対決は実現しました。
仕切り中の様子など本割に比べ、実に取り難そうな二人でしたが、結果は若乃花が勝利して久々2度目の優勝。
当時は大いに騒がれ、後に様々な憶測など物議を醸しだすこともあったこの「兄弟決戦」。
果たして実現したことは良かったのか?悪かったのか?今となっては藪の中です。
小泉首相も日本中も「感動した!」あの一番
「日本で一番有名な優勝決定戦」と言っても過言ではないかもしれません。横綱貴乃花を紹介する際、必ずと言っていいほど放送されるこの取組。
平成13年夏場所千秋楽の優勝決定戦、「痛みに耐えてよく頑張った!」のあの一番です。
この場所初日から好調を維持し、全勝で優勝を引っ張る貴乃花。
久々の全勝優勝が期待される中、14日目の武双山戦で敗れ右膝半月板損傷の大怪我を負ってしまいます。
土俵に上がることさえ困難と見られた千秋楽、休場を勧める周囲の意見を押し切り貴乃花は出場。あっけなく敗れた本割でしたが、優勝決定戦では武蔵丸に上手投げで勝利し、見事優勝を飾りました。
しかし、結果的に貴乃花にとってこれが最後の優勝となり、この怪我が引退の原因となってしまいました。
「痛みに耐えて良く頑張った!感動した!おめでとう!」小泉首相が表彰式で絶叫したこの場所は今も相撲ファンの中で語り草となっている一番です。
新横綱を襲った悲劇とファンに与えた感動
最近の相撲ファンにとって「印象に残る優勝決定戦」と言えば、この一番かもしれません。
平成29年春場所の「稀勢の里VS照ノ富士」決戦
肩を怪我した稀勢の里が逆転優勝を果たしたあの場所です。
前場所悲願の初優勝を果たし、19年ぶりの日本出身力士による横綱となった稀勢の里が、新横綱として迎えたこの場所。
これまでの閊えが取れたように初日から連勝街道を突き進み12連勝。優勝戦線のトップを走ります。
しかし好事魔多し、13日目の日馬富士戦で敗れ、左肩に大怪我を負ってしまい、14日目は何も出来ず鶴竜に敗れ、照ノ富士を星1つ差で追う展開となってしまいました。
14日目の相撲内容を見た多くの相撲ファンが、取組にならないであろう千秋楽を予想する中、稀勢の里は照ノ富士に本割・優勝決定戦と勝利して奇跡の優勝。
新横綱が果たしたこの逆転優勝は多くの相撲ファンに感動を与えましたが、結果的に貴乃花同様、この怪我が引退の原因となってしまいました。
多くの相撲ファンの脳裏に残る優勝決定戦です。
逆転優勝はレアケース?
ここまで印象に残る優勝決定戦をご紹介させて頂きました。
冒頭でも書いたように、平成以降で43回行われている優勝決定戦なのですが、春場所の霧馬山のように「同じ相手を本割・優勝決定戦で連覇しての優勝」となると、今回が8回目ということで、実はそれほど事例が多いものではありません。
今場所の前がいつになるのかというと、まずは記憶に新しい昨年九州場所。阿炎が千秋楽本割で高安を破り、巴戦で高安と貴景勝を破った逆転優勝。
今回数字を調べた中で、個人的に最近逆転優勝が多い印象が強かったのは、九州場所・春場所と続いたからなのかもしれません。
実際にその前の「千秋楽の逆転劇」となると、平成29年秋場所、日馬富士が本割・優勝決定戦と豪栄道を連覇した場所まで遡らなければなりません。(日馬富士最後の優勝)
今回の霧馬山や、九州場所の阿炎はいいものを見せてもらったようです。
しかし、直接対決に限らず「千秋楽逆転優勝」に関していつも思うのは、推し力士が逆転した側であれば狂喜乱舞かもしれませんが、逆の立場と考えると掛ける言葉もありませんね。。。
唯でさえ相撲ロスになる千秋楽翌日なのに、、、
大栄翔のファン、、、
ということで、タイトルとは大きく離れた内容になってしまいましたが、今回は優勝決定戦を改めて振り返ったということにしておいてください(笑)。
ちなみに逆転劇で盛り上がったと言えば、現在の九重親方、千代大海が初優勝を飾った平成11年初場所。
星1つ差でトップを走る横綱若乃花を千秋楽本割で千代大海が破り、13勝2敗同士で行われた優勝決定戦は、史上初めて物言い取り直しとなった唯一の優勝決定戦となりました。どこかの機会で見てみて下さい。