優勝決定戦で変化するのはいけないのか?

貴景勝優勝決定戦を制す

令和5年大相撲秋場所、千秋楽を3敗のトップで迎えた熱海富士。

千秋楽の土俵には、「所要18場所での史上最短優勝」と、白鵬を超える「史上4番目に若い21歳0ヶ月での優勝」が掛かっていました。

しかし熱海富士は本割で元大関で前頭2枚目の朝乃山に敗れ、4敗で並び迎えた大関貴景勝との優勝決定戦でも星を落としてしまい、初優勝にはあと一歩及びませんでした。

14日目を終えた時点で5人の力士に優勝可能性が残る大混戦だった今年の秋場所。

(14日目終了時点での優勝争い)
3敗:熱海富士
4敗:貴景勝、大栄翔、高安、北青鵬

千秋楽の取組結果によっては巴戦はおろか、4人による優勝決定戦もあったのですが、結果的には4敗だった高安は霧馬山(現霧島)、北青鵬は豊昇龍にそれぞれ本割で敗戦。

貴景勝と大栄翔の4敗相星決戦は貴景勝が大関の意地を見せ勝利、一方冒頭でご紹介した通り熱海富士は本割で朝乃山に敗れ、結果的に11勝4敗の「貴景勝VS熱海富士」による優勝決定戦となり、最後は貴景勝が勝利。大関として番付の面子を保ったわけです。

 

 

そんな今回の優勝なのですが、優勝決定戦の立ち合いで見せた貴景勝の変化への賛否がネット上では議論の対象になっています。

果たして今回貴景勝が見せた「立ち合いの変化」、そしてそこまでして掴み取った「今回の優勝の価値」はどうだったのか?

今回は秋場所千秋楽優勝決定戦における「貴景勝の変化」について語っていきたいと思います。※秋場所の感想ではなく

優勝してなんぼの決定戦

まず個人的な見解だけで言わせて頂くと、結論「優勝決定戦は勝ってなんぼ」だと思っています。

昔から相撲ファン達が求める力士のあるべき姿として、「上位力士は受け止める」「下位力士は挑戦者として真っ向から勝負する」というのがあります。

これは私も賛成で、明らかに足が揃っていたり、低すぎる立ち合いに対してを除けば「横綱大関が下位力士の挑戦を受ける」ことは、番付の重みを思い知らせるためにも必要で、「下位力士が真っ向勝負する」ことは、挑戦者として自身の未来のためにも重要だと思っています。

晩年の白鵬による立ち合いに眉をひそめていた方は、恐らくそれが根底にあったからなのでしょう。

しかしそれは本割での話です。

優勝決定戦は、「優勝を決定するための戦い」だと私は思っています。

だいぶ昔の話にさかのぼりますが、そもそも大相撲に優勝制度が設けられた明治42年から40年くらいの間は、優勝決定など本割の勝負以外は存在せず、相星で複数の力士が並んだ場合は、「番付上位の力士」が優勝とされてきました。

そんな中、大相撲人気を盛り上げるため、優勝決定戦などの本割以外の取り組みが行われるようになったのは、昭和22年6月場所から。

制度が元のままであれば、今場所含め3回行われている今年の決定戦は存在せず、貴景勝・豊昇龍・霧馬山 霧馬山(現:霧島) がすんなりと優勝していたわけです(結局勝ってますが)。

秋場所:貴景勝(大関)VS熱海富士(前頭15枚目)
名古屋場所:豊昇龍(関脇)VS北勝富士(前頭8枚目)
春場所:霧馬山(関脇)VS大栄翔(小結)

長い説明になりましたが、私の中で優勝決定戦は「番付を超えた優勝を賭けた勝負」になるので、番付が離れている力士同士であれば「下位力士に与えられたワンチャン」、同じ地位(近い)であれば「優勝が懸かったところでもう一丁」という取組です。

上位力士だから。。。大関だから。。。

そんな言葉は不要です。勝たなければ意味はないのです。

「貴景勝の変化」この事実を考える

優勝決定戦の位置づけについて語らせて頂きましたが、今回の立ち合い変化には否定的な意見も多いので、「都合の良い解釈」と感じる方も中にはいらっしゃることでしょう。

たしかに人それぞれの捉え方や考え方になりますので、優勝決定戦であっても「変化は否」で良いと思います。

しかし、私が今回の相撲に対して「勝ってなんぼの優勝決定戦」ということ以上に言いたいのは、「貴景勝が変化してまで勝とうとした」という事実をもっと重要に考えて欲しいということ。

ネットやSNSなどを見ると、今回の相撲に対して否定的な意見も多いですが、恐らく一番納得いってないのは貴景勝本人のはずです。

私が立ち合い変化に対していつも思うのが、「普段変化を良しとしない相撲スタイルや相撲道を持った力士」が注文相撲を取った時の、その相撲に懸ける想いや、まともに取れない体調などへの本人の苛立ち。

「武士道精神」「臥薪嘗胆」と日頃から口にする「侍貴景勝」が真っ向勝負を避けた事実・背景・その想い、、、

これまでの貴景勝がしてきた言動を考えた時、何か言えるか??ということです。

NHKの大相撲放送で流れる「思い出の土俵」。今場所は奇しくも平成14年秋場所でした。

約20年前のこの場所は、大怪我で休場が続いた貴乃花が7場所ぶりに復帰した場所になるので、相撲ファンの中でも印象に残っている方は多いと思います。

この場所、序盤苦しみながらも千秋楽まで優勝争いに加わった貴乃花でしたが、13日目の千代大海戦の立ち合いで大きく変化しました。

多くのファンが勝ち越しを決め、現役が続いたことに対して安堵の気持ちでいる中、勝ち越しではなく優勝に対して強い想いを持っている貴乃花の凄みを思い知らされた一番でした。

貴景勝の相撲からは「覚悟」を感じます。

今場所も国技館には現地観戦に行かせて頂きましたが、現地ではどうしても「頑張れ」といった応援の類を叫ぶことが出来ません。燃えてる太陽にこれ以上燃えろと誰が言えようか、、、

「本割」の相撲に関しても同じようなことを書いていました。自分の想いは一つらしいです。

 

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追伸
相撲観戦の際、「貴景勝~!」と呼ぶのも呼びつけになるので何となく失礼に感じ、かと言って「大関!」と言うのもなあ、、、といつも思い、結局静かに見守っています、、、ちなみに後輩が平戸海応援しているのですが、そちらはドキドキして声が出ないらしい、どっちもどっちだ(笑)

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