白鵬から照ノ富士へ-令和3年の相撲界を振り返る-

勢力図が動いた令和3年の相撲界

気が付けば今年も残すところあとわずかです。年明け早々からコロナに翻弄され、気が付けば年の瀬という令和3年ですが、相撲界においては大きな変動のあった一年として今後語られる年になりました。

令和3年のスタートを切った今年の初場所というと何だか遠い昔のようですが、今年のスタート時点での上位陣の顔ぶれは以下の通りでした。
横綱:白鵬、鶴竜
大関:貴景勝、正代、朝乃山

そして1年納めの九州場所。顔ぶれはこのように変化しています。
横綱:照ノ富士
大関:貴景勝、正代

結果論にはなりますが、令和3年は上位陣の顔ぶれに大きな入れ替わりがあった一年になったと言えます。ということで、今回は令和3年の相撲界で印象に残った出来事を、私が勝手に取り上げ振り返ってみたいと思います。※個人的な見解ですのでご容赦下さい。

第73代横綱照ノ富士春雄誕生

まず真っ先に上げたいのがこちらです。名古屋場所後、照ノ富士がついに横綱昇進を果たしました。

白鵬の引退というのも非常に大きな出来事だったので甲乙つけがたいですが、「引退」と「昇進」を比べた時に、やはり「昇進」の方が未来の相撲界への一歩という気がしますので、照ノ富士の昇進をまずは上げたいと思います。

昨年、再入幕直後に5年ぶりの幕内最高優勝&三役への返り咲きと、見事に復活を遂げた照ノ富士でしたが、今年はそれを更に凌駕した一年でした。

関脇からスタートした令和3年でしたが、初場所:11勝4敗、春場所:12勝3敗 (優勝) 、夏場所: 12勝3敗 (優勝) 、名古屋場所:14勝1敗、秋場所:13勝2敗(優勝)、九州場所:全勝 (優勝)

春場所後には大関へ復帰、そして先程書いたように、名古屋場所後ついに横綱昇進を果たしました。さらに今年は77勝をあげ年間最多勝も獲得、まさに照ノ富士の一年でした。

 

もう何年も前に横綱昇進してもおかしくなかった照ノ富士ですが、一度落ちたことにより、相撲だけでなくメディア対応も丁寧になり、綱を張るために心を鍛える期間になったかもしれません。来年は幕内全員がストップ照ノ富士で来るはずです。怪我をせずに長く頑張ってもらいたいです。

白鵬ついに引退、間垣襲名

現役晩年は色々と言われることも多かった横綱ですが、数字に関しては相撲史に残る数々の記録を残しました。

しかし、私が個人的に思う白鵬最大の功績は、相撲人気がどん底だった期間を先頭に立って支えたことです。

相撲ファンには様々な意見があると思うので引退に際して賛否あって良いと思うのですが、相撲協会だけは白鵬に対してもっと恩義を感じるべきではないかと感じます。私が見てきた相撲の中で、最も協会がピンチだった時期が白鵬の一人横綱時代です。これまで時代を作った横綱たちの引退に比べて、協会も含めて全体的にひっそりしていたような気がします。断髪式ではぜひ協会から何か表彰などあればと思うのですが。。。

 

名古屋場所の千秋楽全勝決戦。背景を知らなかったので、14日目の正代戦含めてモヤモヤしましたが、引退を決めての土俵だと思って見直すと「勝利」にこだわり続けた白鵬の相撲道が凝縮された一番だったようにも思えます。

照ノ富士はこの一番に勝って、引導を渡したかったでしょうね。

 

鶴竜も引退

「白鵬引退」ですっかりと押しやられてしまった感のある「鶴竜引退」ですが、その辺りも鶴竜らしくて個人的には好きです。そうです、春場所中に横綱鶴竜が引退を表明しました。

もはやどこを怪我していたのか忘れてしまうほど、この一年は怪我続きの鶴竜でしたが、最後に土俵に上がらずに引退になってしまったことが本人は勿論、ファンとしても残念なことでしょう。

 

引き技も多く相手を圧倒する印象があまりない鶴竜ですが、裏を返せば相撲が器用だということです。鶴ヶ嶺や逆鉾を彷彿させる前捌きの巧みな相撲は、うちの祖父もファンでした。

引退会見が横綱なのにリモート。これも何だか鶴竜っぽいですが、人望のある鶴竜ですので親方としても横綱を目指して角界をリードして欲しいです。

 

時津風親方ガイドライン違反で退職

もっと前の出来事のような気もしますが、これも今年2月の出来事でした。時津風親方(元時津海)がコロナウィルスに関するガイドライン違反で退職勧告を受けて引退しました。

退職勧告を重いと捉える方もいるかもしれませんが、時津海はこれが初めてではなかったので自業自得という意見も多かったと思います。

そしてこの時津海の時津風退職により、土佐豊が時津風を襲名。その結果として「間垣」名跡が空席となりました。

この出来事が、親方株を探す白鵬を引退に向けて動かす要因に、少しはなったような気もします。それも踏まえて考えると非常に印象的な出来事でした。

 

 

大栄翔大躍進-朝霞市が全国へ-

今年最初の場所を制したのは、埼玉県出身者として初の優勝を勝ち取り、朝霞市の名を全国に轟かせた大栄翔です。

ここ一年ほど二桁勝利や金星、三賞獲得と実力を着けて来た大栄翔でしたが、この優勝で、もはや「上位挑戦」という立場ではなく「上位力士」としての印象が強くなりました。

九州場所圧巻の全勝優勝を果たした照ノ富士でしたが、最も危なかったのがこの大栄翔との一番。惜しくも敗れはしたものの実力者であることを証明した力強い一番でした。

照ノ富士から初金星も奪っており、これからは照ノ富士キラーになっていきそうな気もします。あの強い当たりが安定した横綱のバランスを崩します。

そしてもちろん親友貴景勝とのシバキ合いも期待しています。

貴景勝あの状況から勝ち越し

優勝争いには加わったものの、今年は1度も賜杯を抱くことなく終わった貴景勝。本人としても不完全燃焼で満足出来ない一年だったことでしょう。そんな貴景勝ですが、個人的に印象に残ったのは、優勝争いをした場所ではなく秋場所の土俵です。

名古屋場所2日目の逸ノ城線で頸椎を痛めた貴景勝。思い切ってぶちかます相撲の為その影響を心配されました。そして迎えた秋場所は初日から3連敗。綱取りから始まった年が一転して、大関陥落さえ見えてきました。

しかしここで切れずに持ち直すのが貴景勝。中日に星を五分に戻し一気に勝ち越し。この精神力こそ貴景勝の真骨頂です。まさに勝って驕らず負けて腐らずの武士道精神。

九州場所千秋楽照ノ富士戦では完封された感もありましたが、初場所では雪辱を晴らして欲しいものです。

荒磯部屋がスタート

元横綱稀勢の里の荒磯親方が、悲願だった「荒磯部屋」を地元茨城でスタートさせました。現在は仮宿舎として筑波大学の土俵を使用していますが、来年5月には新たな部屋が完成予定です。

土俵を2面にした稽古場、食事時間の変更、ミーティングルームの設置、大部屋の廃止など、これまでの相撲界の仕組みに改革をしていく方針で、今後とも目が離せない部屋になっていきそうです。

最近の相撲界は横綱が去ることが多かったので、技術や経験をしっかりと伝承していってほしいと思います。

そして稀勢の里には、新しい相撲部屋運営だけでなく、新しい角界のあり方を作り上げて欲しいとも思っています

 

断髪式はいつになる?髷付き親方問題

巡業の中止や無観客開催や観客制限など、コロナの影響は相撲界でも随所に及びましたが、目に見える形で現れているのが引退した若手親方の髷です。

通常東京場所の直後に行われる断髪式も、地方巡業同様に中止になりました。最後に一般開催された豪風以降、本来実施されるタイミングが5回も飛ばされることになりました(令和2年夏場所後、秋場所後、令和3年初場所後、夏場所後、秋場所後)。

荒鷲や勇輝など、諸事情で待てない親方たちは一足先に一般開放せずに実施しましたが、最後の晴れ舞台となる断髪式は出来るだけお客さんを入れたいという親方が殆どなので、気がつけば髷付き親方たちの大渋滞が角界に起こりました。

 

様々な制限が解除されるであろう令和4年は、空前の断髪式ラッシュが予定されています。

朝乃山と竜電もとガイドライン違反

前述した時津風親方だけでなく、現役力士にもガイドライン違反は続きました。まずは幕内竜電が、ガイドライン違反があったと5月場所を休場。その後3場所を休場しました。

そして何より残念だったのが大関朝乃山。こちらも同じく夏場所中にガイドライン違反が発覚。当初嘘の供述をしていたことと、大関という立場から何と出場停止6場所という処分が下りました。横綱に一番近いとも言われた朝乃山だっただけに、この1年間(実質2年近く)の空白は相撲人生を大きく狂わせてしまいました。こうして書くと、竜電との差を感じてしまうのは私だけでしょうか?

 

 

王鵬いよいよ新入幕へ

こちらは今年の出来事というよりも、令和4年に向けた期待感という方が大きいです。ようやくといった感じの方も多いかもしれませんが、昭和の大横綱大鵬を祖父に持ち、元関脇貴闘力の三男王鵬に新入幕が見えてきました。初場所は微妙かもしれませんが、来年中には豊昇龍との一番も実現しそうです。

豊昇龍、琴手計や塚原など期待の若手が集う中、デビュー当時から最も期待されていた王鵬。期待感や注目度が大きかったので、ここまでのんびりだった印象もありますが、まだまだ21歳。

おじいちゃんはおろか、お父さんの背中もまだ先にあります。未来モンスター王鵬の未来に期待でしています。

貴健斗と平戸海新十両

この二人は本当に個人的な話題です。貴乃花部屋時代から応援してきた貴健斗ですが、春場所ついに新十両を果たしました。どんな相手に対しても引く事なく愚直に前に出る、そんな貴健斗。怪我で陥落してしまったご当所九州場所でしたが、序盤戦黒星先行から粘っての勝ち越しを決めました。努力は必ず報われます。再び前に!

  

 

そして平戸海。こちらは会社の後輩の影響でいつの間にか応援しています。あのいつも厳しい境川親方ですら稽古量を褒めるほど熱心な力士です。小さな体ながら正攻法でいい相撲を取ります。 連日保護者が花道で見守る中熱戦を繰り返しましたが、千秋楽まさかの休場。初場所何とか十両には残れそうですが、早く怪我を治してまた頑張って欲しいと思います。

 

ということで令和3年の大相撲を振り返ってみましたが、やはりそのタイミングでそれぞれ記事を書いているので、自分としても印象的な出来事だったんですねと改めて実感。

令和4年はどんな一年になるのでしょうか?力士の皆様が来年も怪我無く過ごせますように。。。。

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